内海 和明
LiNbO3や LiTaO3など 4d および 5d 遷移金属元素を含む酸化物の研究は古くから行われており,誘電体材料や触媒物質への応用へ向けた多くの研究がなされています.一方で,Ru や Ir などのいわゆる Pd,Pt グループイオンを含む金属酸化物においては,実用的な観点からなされた研究は極めて少ないですが,4d/5d 電子に起因する興味深い物性が近年見いだされています.本特集では,その 4d/5d 電子系酸化物の研究における近年のトピックスをご紹介いただき,何が特徴的で興味深いかをご解説頂きます. (特集担当委員:宮川 仁)
寺崎 一郎・岡崎 竜二
電子相関を示す4d、5d遷移金属の特徴を3d遷移金属酸化物と比較を交えつつ論じ、特集全体の導入とした。後半は、筆者らの最近の研究結果を簡単に紹介し、後に続く記事で紹介する物性を補っている。
佐藤 博彦
水熱合成法を用いて、強相関電子系として興味深い磁気的および電気的性質を持つルテニウム酸化物の物質探索を行い、いくつかの新規物質の合成に成功した。本稿では得られた物質の構造と物性について解説する。
山本 文子
高圧法により合成したパイロクロア型ルテニウム酸化物
A2Ru2O7(A=Hg,Cd,Ca,Tl)の物性と結晶構造を報告する。その中で金属絶縁体移を示す場合(A=Hg,Tl)と示さない場合(A=Cd,Ca)の相違を考察する
山浦 一成
5d電子系ペロブスカイト型酸化物の磁気金属絶縁体転移(多バンドスレーター転移)の概略について述べる。この相転移は5d電子系の特徴をよく反映している現象であり、新技術シーズとなる可能性がある。
広井 善二・山浦 淳一・播磨 尚朝
パイロクロア酸化物Cd2Os2O7が227Kにおいて示す金属絶縁体転移は、歪まないパイロクロア格子上でOsスピンが全入全出型の磁気秩序を形成することによって起こる磁気リフシッツ転移であると考えられる。
有馬 孝尚・髙木 英典
層状複酸化物Sr2IrO4の放射光X線磁気散乱実験により,4価のイリジウムイオン上で,スピンと軌道が絡み合った特異な電子状態が実現していることが明らかになった.今後,独自の電磁気機能を持った材料の開拓につながることが期待される.
佐々木康弘・高橋 尚武・大西 康晴
吉川 正博・一森 照光・牧谷 敦
杉山 治
小川 哲朗
内山 潔