岡田 清
セラミックス材料において強誘電体・誘電体材料は重要な材料群を形成しております.近年,マルチフェロイック材料,酸窒化物強誘電体材料,有機強誘電体材料など新しい材料研究の展開が図られております.本特集ではこれら強誘電体・誘電体材料の最新の研究成果を紹介して頂きます. (特集担当委員:森分博紀)
野田 幸男・木村 宏之
電気歪み効果や圧電効果を示す強誘電体も今日で言う「マルチフェロイック物質」であるが,最近注目を浴びているのは電場に対する磁気モーメント,磁場に対する電気分極という電気磁気的な交叉相関の応答を持つ物質群である.この解説では,磁気誘起強誘電性を研究する上で何が不可欠なのか,どのようなことがわかっていて何がわかっていないのか,将来本当に役立ちそうなのかなどを手短に示すこととする.
賀川 史敬
近年,有機電荷移動錯体において,磁場に応答するイオン強誘電性(マルチフェロイック)や,電荷移動が引き起こす巨大な電子強誘電性など,新奇な強誘電性が見いだされている.本稿では,2つの有機電荷移動錯体TTF-BA,TTF-CAに着目し,電荷自由度と強誘電分極の関係を中心に解説する.
本橋 輝樹・張 雅茹・孫 世寛・鱒渕 友治・吉川 信一
本稿では,温度に依存しない大きな誘電率を示すことから新しい非鉛系誘電材料として期待されているタンタル酸窒化物ペロブスカイトSrTaO2Nについて,特異な結晶構造とそれによって誘電性が発現する可能性を述べる.また,高比誘電率・低誘電損失を示す高密度焼結体を作製する試みについて紹介する.
佐藤 幸生・平山 司・幾原 雄一
巨大圧電特性を示すPMN-PTなどの圧電単結晶では結晶内部にナノドメインが形成される.特性発現のメカニズムに迫るために筆者らはナノドメインの電界に対する応答の直接観察を行った.本稿では,結果の一部を紹介する.
森吉千佳子・黒岩 芳弘
第三世代の放射光施設SPring-8で行われたチタン酸バリウム系強誘電体の構造物性研究のうち,静的精密構造解析の例としてCa置換効果の研究を,また動的構造解析の例としてBaTiO3の電場誘起格子歪みのダイナミクスの研究を紹介する.
和田 智志
本稿では,現在の誘電体材料の問題点を解消した上で,誘電特性をさらに向上させる新規高性能誘電体材料開発の方針を示す.その上で実際の高密度ヘテロエピタキシャル界面を持つ新規誘電体材料における誘電特性向上を紹介する.
狩野 旬
強誘電体とナノ金属粒子が界面接合した系において,誘電性がアシストする触媒作用があることが見いだされつつある.本稿では,この現象を発見した経緯と,現在考えられているメカニズムについて考察を試みる.
小野寺 彰・武貞 正樹
強誘電性が超薄膜でも安定かという問題は大きな論点である.近年の成膜技術の向上に伴い臨界膜厚は年々減少し24Ǻと言われる.薄膜内で本質的にどのような現象が起こっているのかという問題を層状ペロフスカイトの観点から論じた.
是枝 聡肇
リラクサー強誘電体は幅広い温度領域において非常に大きな誘電応答を示すことがよく知られている.本稿では1GHz~数THz までの広帯域光散乱分光を通して明らかにされたリラクサーの動的なフラクタル性について,代表的なリラクサー物質であるPb(Mg1/3Nb2/3)O3 の研究結果を紹介し,これまであまり注目されてこなかったメソスケールでの自己相似構造(フラクタル)とそのダイナミクスについて,巨大誘電応答との関連性を考察する.
神野 伊策
圧電MEMSの新しい応用として振動発電素子が注目されている.圧電材料の持つ高い変換効率と振動工学を融合することで小型高効率振動発電素子が実現できる.Tiカンチレバー上PZT薄膜の発電性能について紹介する.
安藤 正道
ポリ乳酸は比較的大きな圧電性を発現させることが可能な数少ないポリマーの1つである.焦電性がなく透明度も高い事からさまざまなヒューマンマシンインターフェースへの応用が期待できる.ここではその応用例を示す.
上田 政則・谷口 眞司・西原 時弘・横山 剛
中垣 邦彦・李 相宰・宮下 武也
野田 俊成・池田 潤二