松廣 啓治
軽薄短小の技術開発がもてはやされている中でも,「大きな」セラミックスはさまざまな目的で開発され,さまざまな場所で使用されています.ここでは,産業用の大型セラミックス部材を中心として,「大きな」セラミックスに関するトピックを紹介します.(特集担当:日向秀樹(産業技術総合研究所)・特集担当委員:山口 巖)
北 英紀
近年,我が国は環境・エネルギー問題の深刻化,産業競争力の低下という状況にあり,大型セラミックスの重要性が増している.多様なニーズに適応できるプロセスや評価技術に加え総合工学としての取り組みの重要性について概説する.
藤原 徳仁・浅野 憲啓
鋳造用に開発されたVプロセスをセラミック成形用へと応用開発した.これにより真空ポンプと砂を保持する型(枠)のみでスラリーを脱水,固化させ,高品質で3mの大型,複雑セラミックの製造が可能となった.
白井 孝・藤 正督
複雑形状部材の作製やニアネットシェイプを実現する成形プロセスとして注目されているゲルキャスティング法を,大型セラミックス部材の製造プロセスに応用した研究事例や問題点,改善案について解説,紹介する.
安藤 正博
一言で炭化ケイ素セラミックスといってもいろいろな種類がある.その中でも常圧焼結炭化ケイ素セラミックスの特徴を含め,部材の大型化ならびにその用途例について紹介する.
山之口秀則・萩 春二
従来の7倍の視野を持つ新型の超広視野カメラ(HSC)がすばる望遠鏡に取り付けられ,いよいよ本格的な科学観測が始まる.このHSCのCCDセンサを冷却する基板および巨大なレンズ群を支持する構造体として採用された当社のセラミック部品について紹介する.
須山 章子
耐環境性,耐熱性に優れたSiCは,航空宇宙機器やエネルギー環境機器の構造部材として大型化・複雑形状化が志向され,SiC同士を接合するための高強度で熱安定性に優れた接合技術が求められている.反応焼結を利用したナノ構造接合技術,レーザろう付技術を紹介する.
磯村敬一郎
ロータリーキルン用大型セラミックレトルトはリチウムイオン正極材の大量生産用に期待されているが,その厳しい耐熱衝撃性や大型化という観点から敢えて多孔質の大型アルミナレトルトを適用した.
脇田 昌宏
世界最大クラスの大型セラミック分離膜の材および構造について説明する.さらに機能性分離膜の材料の違いによる分離の特徴について,試験結果および実プラントでの適用例について説明する.
日野 隆博
衛生陶器は,大型で複雑形状を有するセラミックス製品であり,水まわりの住宅設備機器として広く普及している.本稿では,大型かつ複雑化を可能としている製造技術について解説する.
的場 幸雄
30cm角タイルが大型であった1970年に生産可能となった60×90cmの大型陶板,さらに大きく3mの大型美術陶板製作への経緯,あらゆるジャンルの作家,設計者等の要望に対処するための釉薬,表現技術の開発,また大型であるが故の安全,簡便な施工法を紹介する.
千葉 玲一