岡田 清
各種工業製品に用いられる希少金属・セラミックス材料の世界的な需要の拡大に伴い,資源の乏しい我が国では,工業基盤の維持と今後の発展のため,これらの資源の持続的確保がますます重要な課題となっています.課題解決への一つの取り組みとして,希少・有限資源あるいは大量廃棄資源の「リサイクル」がより注目され,新たな効率的回収・再生技術の研究・開発が,産・学・官の場で活発化しつつあります.本特集では,これら注目度の高まる最近のリサイクル技術について紹介し,その重要性認識の更なる普及と新たな技術展開の促進に寄与することを目的とします. (特集担当委員:籠宮 功)
籠宮 功
天然資源の乏しいわが国では,これまでの工業基盤の維持と今後の発展にとって,希少・有限資源を持続的に確保することが切実な問題となりつつある.この問題の有効な解決策の一つとして,希少・有限資源あるいは大量廃棄資源をリサイクルする技術への期待が高まりつつある.
原田 幸明
発展途上国での需要の急増と新たなイノベーション創生期待を背景に資源需要が高まる中で,資源問題は今世紀に入って新たな段階を迎え,資源の金融コモディティー化を背景として資源供給の変動が常態化する状態になってきている.このような中で都市鉱山開発は,既利用物質の再利用による資源の拡大のみならず,資源の供給と消費の偏在性を克服し資源供給リスクに備える一方策としての役割が大きくなっている.しかし,リスク保障と定常的な経済安定性の両立は難しく,今年から施行された小型家電リサイクルは運用を誤れば安価な海外のe-waste処理に依存した鴉食リサイクルに道を譲る危険性もはらんでいる.そのためには,リサイクル業がアーバンベネフィシエイション(都市選鉱)を行う資源仕分業として自立すること,抽出業がリサイクル物を汎用金属塊として市場に戻すだけの換金リサイクルから,ハイテク原料へと循環させるファインケミカルリサイクルへと変わっていかねばならない.
芝田 隼次
リチウムイオン電池のリサイクルについて,その動向とリサイクルに対する筆者の考えを述べている.レアメタルのリサイクル利用を行うことは重要である.特に,資源を輸入にたよっている我国にあっては,製造工程での廃棄物や使用済み製品をリサイクルすることはますます重要になるであろう.
奧田 晃彦
環境問題,エネルギー問題の解決に鉱山からの貴金属供給だけでなく,リサイクルからの貴金属の供給も重要となっている.なかでも貴金属が多く用いられている触媒分野において,貴金属のリサイクルについて概説する.
野村 勝裕・蔭山 博之・近江健太郎・藤田 光晴・上田 哲也
種々の反応温度,反応時間,酸素分圧における,LaScO3系ペロブスカイトとPt箔との反応性を調べた結果,以下の反応機構が推定された.①PtのPtOxおよびAe1-xPtxOy(Ae:アルカリ土類金属)としての蒸発,②気相中の移動,③イオン交換反応による安定サイト(主にScサイト)への吸蔵.
松宮 正彦・川上 智
近年,希土類磁石はHDD用のVoice Coil Motorに利用されており,希土類需要量は増加傾向にある.本研究は「湿式分離」による選択的に脱鉄処理と,「イオン液体」を活用した低温での希土類電析を連携させた,総合的に省エネルギー対策に直結する希土類リサイクル技術である.
大木 達也
「戦略的都市鉱山」の思想に基づいて,廃製品・部品の人工物特性を積極的に利用することにより,廃プリント基板から電子素子を種別に回収した高度な物理選別の事例について紹介する.
伊藤 秀章
セラミックスはリサイクルが困難な難処理人工物であり,その資源再生技術の開発と循環システムの構築は,資源の乏しいわが国では喫緊の課題となっている.本稿では各種セラミックス廃材の資源回収技術と資源再生システムについて解説した.
前澤 明弘・永井 佑樹
コニカミノルタでは,従来廃棄されていた使用済み酸化セリウム研磨材の状態を解析し,被研磨物であるガラス成分と研磨材を分離することによって再生が可能であることを見いだし,その手法を開発した.
和田 匡史・田中 誠・河合 和彦・北岡 諭・平 博仁・鈴木 智幸
CFRPの製造コストの大幅削減と,今後顕在化するCFRP廃棄物量の急激な増大への対応が求められている.本稿ではこれら課題の解決策として,過熱水蒸気を用いたCFRPからの「炭素繊維回収」と「繊維-樹脂間の密着性向上」を同時に達成し得るリサイクル技術開発の取り組みについて紹介する.
萩野 隆生・平島 剛
我が国が全量輸入にたよる枯渇資源のリンを廃棄物である下水汚泥から回収した.リン回収率は業界最高水準の50%をほぼ達成し,かつ回収リンの売却益を含めずとも当該プラントの自立採算性が見込める可能性を見いだした.
森田 孝治
木島 弌倫
田中 勝久・髙橋 雅英