近年,分析機器の進歩はめざましいものがあり,汎用性・メンテナンスフリー・GUIなどが組み込まれた機器が現れるにつれて,ユーザーの装置取り扱いに対する知識不足も顕著になってきています.納得のできるデータを得るには「材料の合成過程」だけでなく「分析機器の使用プロセス」に関しても,一試料ごとに魂を込めて取り組むようにしなければコンスタントに良い結果が得られるものではなく,大学そして企業で問題となっている分析機器の取り扱いに対して,すべてのユーザーが認識するべき点を本特集で示し,「身近にある装置をフル活用すればここまでできる!」「今まで使ったことのない装置でもここまでできる!」ことを示したいと思います. (特集担当委員:藤本憲次郎)
藤本憲次郎
紺谷 貴之
粉末X線回折法は,セラミックス研究に欠かすことのできない分析手法の1つである.その基本となる定性分析,格子定数の算出に関して,試料調整,測定,解析の注意点・勘所について紹介する.
井田 隆
X線回折線幅解析によって平均的な結晶子サイズを算出できることは知られていたが,最近では回折ピーク形状の分析により,結晶子サイズの統計的な分布を評価する方法も提案されている.本稿ではこの方法によって得られる結果をどのように解釈するべきかについて述べる.
福田 勝利・尾原 幸治
放射光の平行性と輝度を活かした放射光ならではのX線回折法に的を絞り,今まで使ったことのない装置でも簡単な原理を持ち込むことでここまでできるという点を実用的なセラミックス材料の解析を通して紹介する.
川路 均
温度変化に伴う試料の熱吸収・熱放出を測定する示差熱分析(DTA)や示差走査熱量測定(DSC),質量変化を測定する熱重量測定(TGあるいはTGA),寸法変化などの機械的性質を分析する熱機械分析(TMA)等,典型的な熱分析について解説し,研究開発において必要なセラミックスの熱容量,熱拡散率,熱伝導率等の熱的性質の温度変化を測定することについても紹介する.
佐藤 馨
走査電子顕微鏡(SEM)の装置構成,二次電子像と反射電子像で得られる情報を説明し,分析や結晶方位解析技術を概括した.近年の低加速電圧の活用拡大と複数の像検出器装着の動向も紹介した.最新のSEMの多様な機能の活用により,セラミックスの研究でもさらに豊かな情報が引き出せる.
大田 昌弘
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は表面観察だけでなく,試料面の各種物性を画像化することができ,セラミックス研究においても応用が期待される新しい顕微鏡手法である.本稿ではSPMについて原理から各種測定法と応用例について述べる.
岩田 耕一
ラマン散乱を測定するラマン分光法は,同じく振動スペクトルを測定する赤外分光法とともに,物質研究の際の主要な分析手段となっている.本稿では,ラマン分光法の原理とラマンスペクトルの測定法についての簡潔な解説を試みる.
中村 和正
桐原 聡秀
髙橋 雅英