平田 好洋
最近,生物の持つ構造や仕組み,形状などを,新たな研究や製品に応用しようという生態系を発想のヒントとする(バイオインスパイアード)技術が,あらためて注目を集めており , 最近では , テレビ番組で取り上げられ,広く一般の関心も高まっています.これまで , セラミックスを含む各分野でも,生体材料の合成をはじめとして,数多くの研究が行われてきました.その結果,機能発現のメカニズムの解明,再現が進むとともに,これらの研究成果を応用した新製品も生まれ , また,ISO(国際標準化機構)に委員会が設置される等,普及に向けた新たな発展段階を迎えつつあります.本特集では,バイオインスパイアード材料およびシステム研究および応用技術におけるトピックスを取り上げ,今後の研究開発の発展の一助となることを目的とします. (特集担当委員:加藤正樹)
増田 佳丈・齋藤 紀子・白幡 直人・河本 邦仁
革新的材料開発、エネルギー問題、地球環境保全などを背景に、自然の叡智を取り入れた、新しい研究領域が大きな注目を集めている。本稿では、「自然に学ぶ材料プロセッシング」における、最新のトピックスから、複数のナノマテリアルに関して紹介したい。
田畑 仁
酸化物エレクトロニクスとバイオエレクトロニクスの融合技術例を紹介する。モザイクウィルスを用いたバイオミネラリゼーションによるナノスピントロニクス素子、DNA分子鋳型の相補対形成能(プログラム自己組織化)によるナノ構造形成、機能性セラミックスのボトムアップ型3次元ナノ構造形成を活用した細胞チップについて紹介する。
細田奈麻絵
材料系バイオミメティクスの研究は,2000年頃から急速に活発化し2011年には国際標準化の技術委員会が設置された.本稿では,そこで議論されているバイオミメティクス製品の開発プロセスのガイドラインと具体的な研究例を紹介する.
手嶋 勝弥・水野 祐介・我田 元・是津 信行・大石 修治
溶液からの結晶育成を活用したフラックスコーティング法により,さまざまな機能性結晶層をビルドアップ形成した。特に,次世代蓄電池,可視光応答光触媒およびバイオマテリアル等への応用を目指し,その表界面デザインを可能にした。
金森 義明
「モスアイ構造」と「モルフォブルー」は、生物の持つナノフォトニック構造である。これらの表面微細構造を応用した反射防止構造付き光電変換素子と構造色利用カラーフィルターについて解説する。
金 仁華
線状のポリエチレンイミンと光学活性を有する酒石酸、グルカル酸から形成する酸塩基錯体型ナノ結晶体を調製し、それを触媒的テンプレートとして用いることによる、キラルシリカ、キラル酸化チタンの合成について紹介した。
太田 敏孝
珪化木を模倣することによって、木材や紙をセラミックス化することを行なった。人工珪化木、SiC化木、チタニア化木、アパタイト化木、フェライト化木やアルミナ化ペーパー、コーディエライト化ペーパーなどを作製し、その特性を評価した。
石黒 義和
平成17年度より、名古屋大学と自然界の構造から学ぶバイオミメティックによる超はっ水処理技術を研究し、超はっ水ナノ分子ペーパーおよび連続搬送処理装置の開発を行った。
井奥 洪二・横井 太史・上高原理暢
水酸アパタイト焼結体が人体に臨床応用されてから約30年が経過した。近年では、バイオインスパイアード的設計によって、アパタイト系材料は、原子レベルから階層的にデザインされ、高機能化している現状を解説する。
野山 義裕・中野 貴由・石本 卓也・石坂 春彦・坂井 孝司・吉川 秀樹・中島 義雄
人工股関節インプラントの近位表面形態の最適化は,骨-インプラント界面に働くin vivo応力を制御し,骨力学機能に強く反映するアパタイト配向化を促進するため,インプラントの長期安定固定に対し有効な設計指標となる.
𡈽屋 陽一
ナノマシンによる病気の治療や分子情報通信など,未来を担う基盤技術として期待される細胞内小胞を輸送する仕組みを利用して,人工的にナノスケールで物質輸送を制御する試みについて解説する。
後藤 太一・高木 宏幸・中村 雄一・Pang Boey Lim・井上 光輝