三浦 啓一
窯業・土石分野において800℃以上の高温で使用される産業/工業炉の操業中に投入される熱エネルギーのうち,製品加熱に用いられるエネルギーは30%以下で,残りは熱として廃棄されています(バッチ炉では2~3%以下).加えて,冷暖房はじめ家庭で利用される家電機器も生活様式の変化から大型化・多様化しており,年々消費エネルギーは増加しています.本特集では最新の断熱材料が貴重な熱エネルギーを逃がさず,未利用熱を削減し,省エネにいかに貢献しているかを紹介していただきます. (特集担当委員:福島 学)
山本 雅章
鉄鋼業における耐火物・断熱材を初学者にもわかりやすいように鉄鋼製造プロセスで使用される断熱材の役割,種類を説明し,加熱炉を例に構造,省エネの考え方を紹介する.また,直近の新技術についてもレビューする.
松尾 幸久・桂 裕氏
フュームド金属酸化物を使用した微多孔性断熱材は静止空気より低熱伝導率という特徴を有しており,多種多様の用途に使用されている.本稿では,微多孔性断熱材の特性を概説するとともに,ユーザーの視点に立って適切,あるいは有効な適用方法を紹介する.
田中 洋介・松岡 鮎美
セラミックスの製造における未利用熱削減を念頭に置き,焼成炉のエネルギー収支について解説し,セラミックス向け焼成炉において未利用熱の削減が期待できる高強度高断熱性セラミック多孔体について紹介する.
湯淺 明子
パナソニックでは,2002年に真空断熱材「U-vacua」を冷蔵庫筐体に適用することにより消費電力量の低減に大きく貢献し,その後も,独自の研究開発により進化させてきた.省エネ技術の追求を目的とした真空断熱材の断熱性能向上に向けた要素技術開発の取り組みをいくつか報告する.
松原 秀彰・井須 紀文・高田 雅介
住宅・ビル等の冷暖房によるエネルギー消費に関する省エネ技術として,多孔質シリカ粉末およびシリカエアロゲル等を用いた真空断熱材の開発の研究成果についての解説している.
橋本 敏昭・前田 六郎・中島 幸次・塩野 浩史
セラミックファイバー断熱材は基本材料であるバルク,ブランケットをはじめとして多種の応用製品がある.要求断熱性を満足させるためにはそれらの特徴と注意点を理解した適用が必要である.また低熱伝導を目指した最近の複合材料にも触れる.
平田 好洋
異なる熱伝導度を有する2つの板状複合材料の熱伝導度が,直列と並列のエネルギー流束に対して解析された.これら2つの構造モデルと誘導された熱伝導度が組み合わされて,立方体の介在物を含む固体の熱伝導度が解析された.
大村 高弘
大気圧下および真空下における断熱材の熱伝導率から,熱伝導率推定式を作成する方法を示す.この推定式を使って,断熱材の固体,ふく射,気体の熱伝導率を個々に推定することが可能である.また,断熱材の内部構造予測にも役立つ.
福島 学・吉澤 友一
氷を細孔源とするゲル化凍結法により最高98%の気孔率を有する断熱材を開発した.マイクロメートルサイズの気孔からなるハニカム状組織を有し,良好な機械加工性と極めて低い熱伝導率値を兼備していた.
北 英紀・樋本 伊織・山下 誠司
断熱性と軽量化の両立を目指し,アルミ溶湯搬送容器と立体幾何学をモチーフとして取り組んできたセラミック大型容器の設計について概説する.
藤 正督・高井 千加
筆者らの研究グループでは,中空粒子の性質,とりわけナノサイズの中空粒子の特性に魅せられ,ナノ中空粒子の研究を行なっている.研究室での合成実験を経てパートナー企業と研究開発を進め,ナノ中空粒子の断熱性を生かし世界で初めて透明超断熱フィルムの開発に成功した.このような,特異な機能性を発現するナノ中空粒子の魅力と,これらの透明超断熱フィルム等への応用について説明したいと思う.
福島 学
竹内 繁樹
大石 泰丈
北村 恭子・野田 進