中山 和尊
WMO(世界気象機関)によると2025年には中近東をはじめアメリカ,ヨーロッパ,中国など世界中の幅広い地域で深刻な水不足が予測されています.まさに21世紀は「水の時代」と言われており,早急な水資源の有効利用システムの構築が叫ばれています.このような状況の中,耐食環境下で長時間利用可能な水処理用のセラミックスフィルターや膜などがいかに利用され,何が期待されているかを各記事にて説明するとともに,最新の研究動向についても代表的な企業や大学,研究機関から解説していただきます. (特集担当:福島 学 (独)産業技術総合研究所)
福島 学
近い将来セラミック水処理部材が世界中で普及する時代が到来する事を期待しつつ,本特集号がその起点の一つになることを切望する.
青木 伸浩
浄水分野での膜ろ過技術の適用と,セラミック膜を適用した,セラミック膜ろ過浄水システム概要と実績,今後について.
杉山 聡・和田 努
従来より全国の下水処理場において長年使用されてきたセラミックス製の散気板を利用した散気装置を新たに改良し,開発した超微細気泡型散気装置(高密度配置対応型)の特徴や性能について紹介する.
中田 昌幸
セラミック平膜は物理的・化学的な耐久性が高く長期間にわたり安定したろ過性能と処理水質の維持が可能である.セラミック平膜の特徴と下水処理場内設置された膜分離活性汚泥処理プラントにおける実証結果を報告する.
保科 克行
槽浸漬方式セラミック膜ろ過システムの概要(膜エレメント・膜モジュール・装置・システム)と高濁度の表流水やマンガン・臭気が含まれる表流水を原水とする浄水場等へ適用した事例を紹介する.
猪野 大輔・橋本 泰宏・高岡 友康・丸尾ゆうこ・原 恒平
コアシェル構造の光触媒粒子を合成し,高速処理を可能にする流動床の光触媒を用いた水浄化技術を開発した.この水浄化技術を用いて3価ヒ素の亜ヒ酸を酸化処理し性能評価を行った.
嶋村 彰紘
界面活性剤アニオンを用いたアニオン交換機能を有する層状複水酸化物に取り込まれたリン酸イオンの脱離と脱離挙動の解析.
谷口 省吾・山田 修・尾崎 博明
近年,水環境中から人畜用の医薬品類が検出されており,新たな水環境問題として懸念されている.本研究では,多孔質セラミックス電極を用いた電気分解処理について10種類の医薬品を対象に検討を行った.
北山 幹人・太田 能生
テープ成形法を用いてマイクロ-マクロ複合細孔構造を有する窒化ケイ素多孔体を作製した.自然界では共存し得ない好気性-嫌気性微生物コンソーシアムが形成され,単独の微生物からは生成しない代謝物が確認された.
野村 幹弘・飯田 幸二・高橋 祐貴・小野 竜平・池田 歩・松山 絵美・田中章太郎・松尾 陽
浄水器の分離部分をコンパクトにするため,濾過部分と吸着剤の組み合わせを検討した.炭素繊維の添加後,ドライゲルコンバージョン法を用いることで,MFIゼオライト濾過膜を得ることに成功した.
都留 稔了・Suhaina M. IBRAHIM・Waravut PUTHAI
Robust膜は,分離膜開発指針のパラダイムシフトをもたらす革新的なコンセプトである.耐塩素性や耐熱性に着目したが,さまざまなロバスト性が考えられ,新規な膜分離プロセスを創出しうる.日本の膜技術と膜利用システムが世界を引き続きリードするためにも,ロバスト性が必要不可欠になると確信している.
袋布 昌幹
リン酸カルシウムはその溶解性の低さより,水環境中のリンやフッ素の処理に用いられている.セラミックス研究者が水浄化になにができるか?未利用資源の利用から水処理技術の開発まで,筆者らの成果を交えながら最近のトレンドを紹介する.
城﨑 由紀