片山 恵一
CO2排出量削減に向けて,再生可能エネルギーとともに,水素エネルギーが再び注目を集めています.2015年には燃料電池車(FCV)の販売も予定され,ここにきて水素エネルギーを媒体とする社会の実現も,にわかに現実味を帯びてきました.燃料電池に代表される水素エネルギーですが,その製造や貯蔵・運搬,分離の過程において,あるいは脆化に対する備えなど,解決すべき課題は多くあります.そこで,本特集では,これら分野において活用が期待されるセラミックス技術について紹介します. (特集担当委員:深澤孝幸)
田路 和幸
水素エネルギー開発の必要性の社会的意義を踏まえ,筆者が開発したストラティファイド光触媒を用いた水素製造と今後の課題について述べている.
高木 保宏
セラミックス製の改質触媒兼支持体とPdAg合金膜を一体化させた「触媒一体化水素製造モジュール」を開発した.天然ガスからの高純度水素製造が1ステップでコンパクトに実現でき,最大8000時間までの耐久性も確認できた.
高村 仁
近年,酸素透過性セラミックス膜を利用した水素製造技術が注目されている.本稿では液体燃料からの水素製造として,ドデカンを優れた酸素透過特性を示すBa-Sr-Co-Fe系セラミックス膜により改質する技術を紹介する.
越崎 健司・深澤 孝幸
メタン水蒸気改質による水素製造向けのNi/Al2O3触媒作製において,含浸法と還元析出法を組み合わせる新しいプロセスを提案した.得られた触媒の構造と改質試験で示された性能を報告する.
張 其武・加納 純也・齋藤 文良・松本 満
筆者らはバイオマスに無機物を添加してメカノケミカル処理(粉砕)し,その産物を非酸素雰囲気中で低温加熱して高純度水素(H2)を発生する手法を見いだした.この手法は原料の乾燥を必要とせず,含水系でも適用可能であるのが特徴である.木質バイオマスの他,水分80%を含む下水汚泥等に適用し,その妥当性が確認されている.添加物として,生石灰(CaO)あるいは消石灰(Ca(OH)2)と,触媒としてNi(OH)2が必要である.本稿では各種Ni系触媒を用い,最も効果的なものはNi(OH)2であることを示し,また,CaOとCa(OH)2では,Ca(OH)2の方がやや有利であることを示した.
都留 稔了
水素分離膜の開発状況,および触媒膜型反応器への応用について紹介する.
岡田 佳巳
水素はクリーンなエネルギーであるが,汎用エネルギーとして利用するには,石油や天然ガスのように大規模に貯蔵輸送できることが必須である.当社は世界に先駆けてこれを実現するSPERA水素システムのパイロットプラントによる技術実証を完了し,商業段階に移行している.本稿では有機ケミカルハイドライド法と上記水素システムについて概説する.
近田 拓未・鈴木 晶大
水素エネルギー技術を支える構造材料において課題となる水素透過および水素脆化を軽減するため,セラミックス薄膜による水素透過の低減が検討されている.これまで核融合炉用途で研究されてきた水素透過低減技術について紹介する.
松本 広重
本稿では,酸化物ナノ粒子の例として表面に硫酸を修飾したナノチタニアを紹介し,界面を伝導場とするイオン伝導性固体の可能性とその応用について考えたい.
西尾 圭史・山口 祐貴
ゾル-ゲル法により作製したPtナノ微粒子分散WO3薄膜を用いた光学的・電気的に水素ガス検知を可能とし,この二つの特性を合わせることにより大気中,水素濃度100ppmから4%までの定量を可能とした.
吉村 昌弘
Marta LARANJEIRA
森分 博紀・高 翔・桑原 彰秀・フィッシャー クレイグ・
木村 禎一・幾原 裕美・小浜 恵一・當寺ヶ盛健志・幾原 雄一