徳植 桂治
著しい発展を遂げつつあるインフォマティクス(情報学)手法を活用することで, 材料開発の効率を大きく向上させようというアイデアが大きくクローズアップされるようになってきました.米国においては材料ゲノムイニシアチブという大きな国家プロジェクトが開始しており,MRSほか,関連学協会でシンポジウムなどが頻繁に行われています.我が国でも,新学術領域「ナノ構造情報のフロンティア開拓-材料科学の新展開」や,「スパースモデリングによる高次元データ駆動科学の創成」,今年度からは「データ駆動型物質・材料科学技術イニシアティブ拠点」などが開始し,研究の機運が高まるとともに,新しい成果が出はじめています.本特集では,この大きく発展しようとしているマテリアルズ・インフォマティクスのセラミックス関連分野における最新の研究成果を紹介していただきます. (特集担当委員:森分博紀)
田中 功・世古 敦人
マテリアルズ・インフォマティクスにはさまざまなアプローチがあり,従来型のデータベース活用研究とは異次元の新しい流れである.本稿では,第一原理計算結果を物質材料のスクリーニングに適用する手法や成果を中心に紹介する.
豊浦 和明・中村 篤智・松永 克志
酸化物中のプロトン伝導挙動に関する第一原理計算と系統的解析より得られた知見に基づいたプロトン伝導性酸化物の材料探索・設計指針について紹介する.
武藤 俊介・志賀 元紀・巽 一厳・津田 宏治
昨今の走査電子顕微鏡(STEM)に付随した分光法では,装置のデジタル化に伴う自動データ収集が可能となり,いわゆるビッグデータからの情報抽出が不可欠となってきた.本稿では筆者らのこの分野への最近の取り組みについて述べる.
永田 賢二・岡田 真人
本稿では,材料科学におけるインフォマティクスへの具体例として,非制限ハートリー・フォック計算からの有効モデルの自動抽出に関するベイズ推論について解説し,データ駆動科学に関する近年の知見を紹介する.
徐 一斌
機材料,高分子,構造材料の基礎データとエンジニアリングデータをデータベース化したシステムであるMatNaviは,世界149カ国から約10万人の登録ユーザが利用している.NIMS材料データベースの長年の開発,運用管理,サービス提供で得られた経験および直面している問題点を分析し,材料開発と材料設計の目的を達成するためのデータベースの将来像について述べる.
東後 篤史
近年になって急速に進歩している第一原理計算からのフォノンおよびフォノンの計算手法,ならびにそれを応用した比熱,自由エネルギー,熱膨張率,格子熱伝導率などの系統的なデータ収集の方法について述べる.
大場 史康・日沼 洋陽・熊谷 悠
第一原理計算による半導体の基礎物性ならびに点欠陥,表面,界面の特性の予測について,近年の計算手法の進展と系統的計算に基づいた物質・材料探索への展開を紹介する.
中山 将伸・信原 邦啓・ランディ ハレム・春日 敏宏
全固体リチウムイオン電池の開発において,高イオン導電性の電極や電解質材料が求められている.従来の試行錯誤や優れた研究者による直感による探索に代わって,計算シミュレーションによる高効率な探索法について紹介する.
武田 隆史・広崎 尚登・舟橋 司朗・解 栄軍
粉末混合物中の1粒子を用いて新材料を探索する単粒子診断法を開発した.従来の単相化や結晶成長が不要となり効率的に新材料の開発が可能となった.本手法を用いて多くの新蛍光体を見いだした.
旭 良司・Erich WIMMER,・Paul SAXE
記述子によるデータベース検索機能と物性計算に基づく組成最適化機能を統合した材料設計プラットフォームを開発した.その概要と伝導性機能材料設計への応用を紹介する.
岩崎 富生
少ない計算データで効率的に材料探索をおこなうことを試みた事例について述べた.特に界面物性をとりあげ,直交表や応答曲面法を用いることによって,重要な記述子を把握でき,有効な設計指針が得られることがわかった.
西島 主明・松山 貴洋・西村 直人・吉江 智寿・西中 俊平・上村 雄一・江崎 正悟・
平 耕司・村井 俊介・藤田 晃司・田中 勝久・小山 幸典・田中 功
材料LiFePO4(LFP)に着目し,異元素をドープすることにより結晶構造の変化を抑制し電池の寿命を増加させることを試みた.
中島 孝
長年にわたる陶器技術支援,人材育成の取り組みと,環境浄化セラミックスの研究開発等について.
中村 静夫
地元企業・大学と連携して取り組んできた産業廃棄物の窯業原料への有効利用事例2テーマと再生エネルギー関連の大型事業の一つである融雪機能付き太陽光発電システム開発についての紹介.