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特集　ナノクリスタルセラミックス技術の深化

近年のナノテクノロジーの進歩によって，セラミックス材料のナノサイズ化は無論， その形態や原子配列までも制御可能になっており，これらは，触媒等の分野において従来のナノ材料と異なる特性を示すことが報告されています．また，異なる特性を有するナノ結晶を精密に配列する集積化技術の開発も進んでおり，従来のセラミックスを凌ぐ巨大誘電率を発現する集積体などの実現が期待されています．2010年ナノクリスタルセラミックスの新展開特集以来の今号では，深化するナノクリスタルセラミックス技術について紹介します．　（特集担当委員：佐藤和好）

■ 金属とセラミックスの接合

桑原　　誠

近年，急速な発展を遂げている金属，半導体，酸化物ナノ結晶の合成およびナノ結晶の配向集積技術を紹介し，これらの技術を基本にしたナノクリスタルセラミックスの製造技術開発の可能性と展望について述べる．

■ ゾル-ゲル法により調製した高分散性チタン酸バリウムナノ結晶の有機無機複合化による誘電体薄膜および透明ナノコンポジット体の作製

有村 雅司・末松 昂一・内山 直行・齋田 真吾・牧野 晃久

ゾル-ゲル法により調製した分散性に優れるBaTiO3ナノ結晶を利用した，有機材料とナノ結晶の複合化による非焼成での有機無機複合誘電体薄膜および透明ナノコンポジット体の形成に関する研究内容の紹介を行う．

■ 大面積の酸化物/有機物積層膜の作製

下岡　弘和

ナノクリスタルからなる大面積ナノ薄膜の作製とその積層を目的とした，液体表面での成膜と，膜と液体の界面への浸透による「その場」積層について，チタン酸バリウム/ポリ乳酸積層膜を例に紹介する．

■ 単結晶ナノキューブ技術の現状と展望

加藤　一実・三村　憲一・馬強

チタン酸バリウムナノキューブからなる規則配列構造を実際のデバイス構造へ発展させるため，集積体におけるマイクロクラックの抑制，マイクロパターンの形成，ナノキューブ界面の構築,特異的な焼結挙動について，最近の研究成果を紹介する．

■ 小さくて大きなナノクリスタル ～ナノシート結晶～

髙杉　壮一・冨田　恒之

ナノシート結晶は一つの次元だけがナノサイズで他の二つのサイズは大きいという，小ささと大きさを兼ね備えるナノクリスタルである．本稿では光機能材料である光触媒と蛍光体のナノシート結晶に関する独特な特性を紹介する．

■ 2次元ナノクリスタルの現状と将来展望

長田　実・佐々木高義

層状金属酸化物の単層剥離で得られる2次元ナノクリスタル（酸化物ナノシート）をベースとした材料研究の推進，さまざまな組成，構造，機能を有するナノシートの開発と，精密集積による新機能材料やデバイスの創製を目指した研究を中心に，無機2次元ナノクリスタル（無機ナノシート）技術の研究動向，応用，将来展望を紹介する．

■ ガラスの不均一性によるナノ結晶化と機能性発現

高橋　儀宏・寺門　信明・藤原　　巧

ガラスにおけるナノ不均一性と結晶化との関連，およびナノ結晶化による欠陥導入とその光機能性材料創製への応用について，筆者らの最近の研究成果について述べる．ナノ結晶化による欠陥賦活は新しい光機能発現の手法として期待される．

■ 水熱合成法によるスピネル型酸化物ナノクリスタルの構造制御

中根　茂行・石井　聡・名嘉　節

物性物理領域で新磁性・光学系材料として注目されているスピネル型酸化物の研究を概説し，こうした新機能性材料研究から期待されるナノクリスタルの特徴や，水熱法で合成できるナノクリスタルの構造的特徴/機能的特性を実例として紹介する．

■ ナノセラミックスクラスターの構造・電子・反応物性：高精度科学計算による理論的研究

檜貝　信一・鷹木　　洋

先端的な材料科学計算により初めて理論的に明らかにされた，ペロヴスカイト系（BaTiO3，他）ナノセラミックスクラスターの新奇な構造物性，電子物性，さらにさまざまな分子との反応物性について紹介する．