田中 勝久
セラミックスは,主に粉体を原料に,粉体のもつ流動性により形状を与え,高い比表面積がゆえに溶融しなくても焼結,緻密化というプロセスによって作製されます.したがって,セラミックスの製造において,粉体の扱いは特に重要であり,その構造や特性を制御することによって,セラミックスの機能を高めたり,従来にない新たな機能を付与したりすることが可能になります.本特集では,そのような粉体制御に関する基礎とそれを設計して用いた応用例について紹介します. (特集担当委員:深澤 孝幸)
多々見純一
微粒子およびその集合体の構造制御に基づく粉体材料設計による先進セラミックスの機能化についていくつかの例を挙げながら概説した.
神谷 秀博
高固体濃度スラリー中の粒子分散状態や流動性に及ぼす基礎的因子,高濃度低粘性分散液の製造が困難な機構を概観し,微粒子分散挙動の制御に必要な界面設計法や分散機構の評価事例を紹介する.
笹辺 修司
機能性粒子は微細化が進み,粉体の操作性は著しく損なわれる.流動性改善を可能とする独特のメカニズムでコンパクトながら比較的大量処理が可能な造粒技術とその顆粒圧縮・引張破壊,流動性特性評価技術を紹介する.
恩田 真吾
セラミックスの機能や品質は,原料粉体やスラリーの特性に左右される.粉体やスラリーの物性としては,粒子径,比表面積,粘度等が挙げられる.物性の評価方法として,光学的特性,吸着特性および界面動電現象を利用した方法を紹介する.
山本 通典・石原 真吾・加納 純也
DEMシミュレーションを用いた回転ドラムにおける2成分系粒子挙動を解析し偏析の原因を明らかにするとともに,偏析改善のための対策として回転ドラムに設置するリフター形状の最適化について報告する.
白井 孝・藤 正督
機械的強度が高く,高温下でも使用可能な多孔質セラミックスは,工業的にも応用範囲が広くさまざまな用途に用いられている.本稿ではゲルキャスティング法による多孔体作製法や機能性材料への応用の事例について紹介する.
成澤 雅紀・河相 武利・井上 博史
水素脱炭焼成法によって得られる白色Si-O-C(-H)粉体を対象として,前駆体であるシリコーン微粒子の特徴や,紫外励起による発光,また様さまざまな環境下で観測される構造安定性について,分光および熱力学の観点より紹介する.
小澤 隆弘・近藤 光・内藤 牧男
原料粉体層に局所的な機械的作用や摩擦熱を加えることで,非加熱,短時間で粒子が合成される.本稿では,機械的手法によるリチウムイオン電池用正極粒子の合成について,その粒子設計と共に紹介する.
横井 敦史・小田 進也・武藤 浩行
粒径の大きい母粒子と粒径の小さい子粒子を静電引力により複合化した複合粒子(機能性複合粒子)を作製し,二次元集積して焼結するとともに,意図した微構造を有するセラミック材料を開発するための原料粉末の充填構造制御技術を解説する.
高橋 拓実・多々見純一・田中 諭
回転磁場中成形プロセスとガス圧焼結プロセスを併用し,厚さ方向に149W m-1 K-1という高熱伝導率をもつSi3N4セラミックスを開発した.本研究の特長は,一般的な焼結助剤のY2O3-MgOを用い, 1900℃ 6hの短時間焼成で,AlNと同程度の高熱伝導率を達成した点である.
堀田 裕司・冨永 雄一
セラミックスフィラーの低充填量において無機有機複合材料の高熱伝導化を図るために,粉体プロセスの活用は有効である.本稿では,粉体プロセスを活用した剥離h-BNフィラーの開発,そのフィラーを用いた低フィラー充填での複合材料の特性について紹介する.
伴野 晃一・鈴木祥一郎・竹田 敏和・佐野 晴信
パワーエレクトロニクスデバイス用積層セラミックキャパシタには,実効誘電率が高く,高信頼性の誘電体材料が求められている.複合的な組成制御を行うことで,要求を満たすパワーエレクトロニクス用新規誘電体材料を実用化し,EVCシリーズの商品化に成功した.
阿部 久雄
公設試験研究機関においても経済効果を伴う取り組みが求められ,清潔,快適,低環境負荷などの機能をもつセラミックス製品の開発が行なわれた.陶磁器産業をめぐる環境の変化のなかで携わったいくつかの研究開発を紹介する.