公益社団法人　日本セラミックス協会

セラミックス第52巻 10月号（2017年）

特集コラボ表紙　

提供：（左）（産業技術総合研究所）明渡純・篠田健太郎「デライト設計に基づくセラミックフライパンのコンセプトモデル（モック）（撮影：（株）アルフォース　工藤恒）
（右）（産業技術総合研究所（TOTO（株）と共同作製））近藤直樹・堀田幹則・嶋村彰紘・大司達樹「トラス構造を有する反応焼結炭化ケイ素」

表彰　第51回－2017年度

随想

特集　高付加価値セラミックス造形技術

日本のセラミックス産業の国際競争力を維持・向上させるためには，新たな技術革新によって，高い付加価値（少品種，少量，高品位）を持つ製品群を開発することが重要です．現在，内閣府の主導する国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム（SIP）／革新的設計生産技術」の中で，セラミックス産業のイノベーションを目的とした事業「高付加価値セラミックス造形技術の開発」（平成26～30年度）が実施されています．本事業は，3D積層造形技術（複雑形状付与）とハイブリッドコーティング技術（表面機能付与）による高付加価値セラミックスの創出を目的としています．社会・産業界から大きな期待を集めている本事業の開発内容とこれまでの研究成果をまとめて特集します．　（特集担当委員：井出貴之）

■ セラミックス3D造形技術

大司　達樹

｢戦略的イノベーション創造プログラム（SIP）／革新的設計生産技術高付加価値セラミックス造形技術の開発｣では，製品形状設計の自由度向上や生産工程短縮に資する3D積層造形技術が開発されている．本稿では，この技術開発の概要等を紹介する．

■ ハイブリッドコーティング技術

明渡　純・篠田健太郎

セラミックス産業のイノベーションを誘起することを目的として，多段階のセラミックス製造素過程を3D造形技術とコーティング技術の二段によって再構築し，新たな製造過程とすることを目指している．

■ レーザーを用いたセラミックス直接造形技術の開発

木村　禎一・三浦　秀士・後藤　孝

セラミックスの積層造形（３Dプリンティング）のコア技術として，アルミナのレーザー焼結技術と，レーザー加熱によるSiCの反応焼結およびSiC系共晶材料の作製について紹介する．

■ 微粒子ペーストを用いた造形と溶射

桐原　聡秀

セラミック微粒子を液体樹脂に分散したペースト素材を用いて，新しいプロセスを構築した．困難であるとされたセラミック構造体の3D造形プロセスをはじめ，従来より2桁程度も細かい粉体を用いた2D溶射プロセスを紹介する．

■ セラミックス粉末積層造形技術の開発

近藤　直樹・堀田　幹則・嶋村　彰紘・大司　達樹

セラミックスの3次元造形法のうち，粉末積層造形法は，セラミックス粉末に樹脂バインダーを混合した粉末を原料に用い粉末層の形成とレーザーによる選択的加熱固化を繰り返すことで，造形体を得る方法である．ここで得られた造形体を脱脂焼成することにより，セラミック部材が得られる．本稿では，粉末積層造形法の向き不向き（適性），原料選定，積層，造形，脱脂，焼成の各工程で生じる現象などを概説する．