岸 弘志
地球には約14億tの水が存在していますが,その97%が海水で,淡水は3%に過ぎません.その淡水も極氷や氷河が大部分で,地球温暖化により極氷や氷河が失われることは,淡水が失われることを意味しています.現在我々が利用可能な淡水は地球に存在する水のわずか1%であり,飲用可能な上水は本当に極わずかな量のみです.持続可能な社会を確立するためには,水環境の革新的な改善に向けた産学協動体制による取り組みの重要性がますます高まっているといえるでしょう.本特集では,2016年度に日本セラミックス協会に設置された「水資源の確保と保全に向けた浄化材料と技術に関する研究体」(分野横断型)の研究活動を中心に紹介いたします. (特集担当委員:鈴木義和,編集協力:中島 章(東京工業大学))
中島 章
水資源の確保と保全に向けた浄化材料を多方面から考える契機とするべく,本特集号を企画するに至った.読者の方々が世界の水問題を意識するきっかけとなり,その方向性を考える一助となることを期待している.
佐藤 利夫・桑原 智之・橋口亜由未
「21世紀は水資源の時代」といわれ,2015年時点で安全な水を飲めない人は既に15億人に達している.水の安全性は微生物学的安全性と化学的安全性の両方の確保が不可欠であり,その技術として最新の紫外線技術について紹介する.
袋布 昌幹・入江 光輝
水の惑星といわれる地球においても,私たちが利用できる水の量は非常に少なく,乾燥地においてはその確保に関する種々の課題が存在する.これらの問題に対してセラミックス材料が果たせる役割は何か?筆者らが取り組んでいるチュニジアでの調査事例をもとに考えたい.
手束 聡子
窒素化合物を過剰に蓄積した水環境を修復する技術の開発が窒素循環のバランスを戻すための有効な手段として期待されている.そこで本稿では,水環境中の無機態窒素の除去に寄与する高機能窒素除去材に着目し,とくに環境中の硝酸態窒素および亜硝酸態窒素を水環境から除去するための処理技術および窒素除去材の開発についてまとめる.
今村 清
水処理で利用されているセラミックスろ過やその表面特性を利用した母材としてのセラミックス例,層状複水酸化物の一例を述べる.
岡田 友彦
水溶液からの有害物質除去に焦点をあて,粘土鉱物の層間修飾により得られる分子認識的な吸着剤への応用例を紹介する.また,シリカ表面に層状ケイ酸塩の微結晶を直接固定化する技術とその吸着性について述べる.
勝又 健一
光触媒は環境材料の1つとして注目を集め,その高い酸化分解活性から浄化材料として研究されてきた.本稿では,光触媒を用いた水浄化材料についての研究動向と光触媒国際研究センターの取り組みについて紹介する.
落合 剛・田子 祥子・林 美緒・藤嶋 昭
酸化チタン光触媒は,水浄化への応用が期待されている機能材料だが,効率の良い浄化装置等は,いまだ実用化されていない.光触媒反応に,オゾン処理等,諸種の技術を組み合わせた複合的水処理技術について,筆者らの成果を中心に概説する.
井須 紀文・加藤 嘉弘・山嵜 悟
住宅水まわりの設備機器に防汚・抗菌性能を付与することで,洗浄水削減等による環境負荷低減と手入れが簡単というメリットを同時に実現できる.銀を含む抗菌セラミックスを用いた水回りの防汚・抗菌技術について述べる.
北森 武彦
いろいろな分野へ応用可能な柔軟性の高い技術.その概略と動向と,本特集の水質分析に関連した話題を紹介する.
酒井 宗寿・中島 章
住宅水まわりの設備機器に防汚・抗菌性能を付与することで,洗浄水削減等による環境負荷低減と手入れが簡単というメリットを同時に実現できる.銀を含む抗菌セラミックスを用いた水回りの防汚・抗菌技術について述べる.
有川 純