今月のオープンアクセス記事
清原 正勝
セラミックス電子材料はコンデンサ,抵抗,インダクタ,電池,センサー,アクチュエータ等として多くの材料が実用化され広く用いられており,重要な材料群を形成しています.これまで我が国はこれら電子材料セラミックスの研究開発において世界をリードしてきました.本特集ではこのセラミックス電子材料の最新の研究動向をこの分野でご活躍の大学,研究機関,企業等の研究者に解説いただきます. (特集担当委員:森分博紀,編集協力:電子材料部会)
東 佳子・古賀 英一
ZnO積層バリスタは,さまざまな過電圧から電子機器を保護する部品である.本稿では,既存のBiおよびPr添加系の技術課題,新規のSrCoO3添加系の特徴を示す.高周波対応の超低静電容量品(0.1pF)や,卑金属内部電極の積層バリスタを主に,最近の研究開発の取り組みを紹介する.
坂本 禎章・杉本 安隆
無線周波数で使用される電子部品材料として,LTCCはモバイル機器の小型化に貢献してきた.そのために進められたLTCC部品の小型化では,異種材料の共焼結技術の果たした役割は大きい.本稿ではこの共焼結技術を紹介する.
安井 久一・三村 憲一・加藤 一実
ランダウ理論に基づくギブス関数の計算の結果,BaTiO3ナノキューブ秩序配列膜の高誘電率が,各ナノキューブの微小な傾斜角によって生じる圧縮歪みのために引き起こされる,強誘電性相転移温度の低下が原因であることが示唆された.
寺西 貴志
電気自動車の加速的な普及に伴い,数分以内の急速充電が可能な高出力二次電池に対する開発需要が高まっている.本稿では,強誘電体BaTiO3を例に誘電体界面の出力改善効果を紹介するとともに,その特性改善メカニズムについて詳細に解説する.
藤原 忍
ZnO光電極に対し,マクロな構造をZnOの前駆体となる物質でつくりだし,ミクロな構造を前駆体からZnOへの変換過程において制御するという取り組みについて紹介し,色素増感太陽電池に適した微構造の設計指針を探る.
野口 祐二
強誘電体は光照射下でバンドギャップをはるかに超える光起電力を示す.本稿では,強誘電体の中でも比較的小さなバンドギャップを有するBiFeO3を例に,界面効果,バルク効果,およびドメイン壁効果について概説する.
永田 肇
チタン・ジルコン酸鉛(PZT)は現在多くの電子デバイスに利用されている.環境負荷低減の目的から,鉛を用いない非鉛系強誘電体(圧電体)セラミックスの研究開発が,2000年以降活発に行われてきた.本稿では,これまでの非鉛系圧電セラミックスの研究開発動向について概説する.
舟窪 浩・清水 荘雄
HfO2基強誘電性は,従来難しかった20nm以下の多結晶極薄膜でも強誘電性の発現が報告され,Siプロセスとの高い親和性から注目されている.本稿では,エピタキシャル膜を用いたHfO2基物質の基礎特性について報告するとともにその将来展望について紹介する.
藤田 利晃・田中 寛・稲場 均・長友 憲昭
温度センサにおける薄型化,高速応答化のニーズに対応可能な窒化物薄膜サーミスタ材料の開発結果と,従来酸化物も含めたNTCサーミスタ材料の理論的解析に基づいた研究成果を報告する.
永井 隆之・谷口 博基
フォトレジスタやフォトトランジスタ等,抵抗体や半導体の特性を光で制御する種々のデバイス素子が実用化されている中で,誘電体の特性を光で制御するデバイス素子は未開拓の領域である.誘電体は現在,コンデンサや周波数フィルタ,センサ,不揮発性メモリ等として電子デバイスに幅広く応用されているため,誘電体の特性を光によって自在にコントロールすることが可能となれば,次世代のフォトエレクトロニクスの展開が期待される.本稿では,筆者らが最近アルミネート系化合物において発見した光誘電効果を紹介し,誘電体特性の光制御の可能性を議論する.
今中 佳彦
地球温暖化,資源枯渇等の問題により,将来の持続可能な社会の実現に向け,人工光合成が課題解決のための有望な技術として注目されている.本稿では,人工光合成システムに適した独自のアノード電極の形成手法について紹介する.
浜尾 尚樹・片岡 邦光・秋本 順二
全固体電池の早期実現が期待されている.本稿では,酸化物型全固体電池において注目されているガーネット系酸化物固体電解質材料について,結晶構造と導電率の相関についての最近の研究を紹介する.