矢野 豊彦
近年,将来の革新的技術と材料開発,および新たな学問領域開拓を目指し,“異分野融合”および“学際領域”研究を促進するため,国および各大学,研究機関のネットワーク構築による研究者の「出会いの場」となる組織やプロジェクトが積極的に設けられ,戦略的な研究提案と加速度的な研究推進が試みられています.我々研究者を取り巻く環境も大きく変化しており,従来の研究室,大学,研究機関の枠組みを超えて人材,場所,装置を共有・活用することで,発展的かつ動的な研究展開が求められています.そこで本特集では,セラミックスを含めた物質・デバイス領域における,機関や研究所の枠を超えた最新の異分野融合研究に着目し,特に次代を担う若手研究者グループによる共同研究の展開例についてご紹介します. (特集担当委員:後藤知代)
関野 徹・垣花 眞人
全国にわたる大学5附置研究所で実施している「ダイナミック・アライアンス」および「ネットワーク型共同研究拠点」について,若手研究者や院生をも含めたさまざまな分野融合・共同研究体制とその特徴について紹介する.
藤岡 正弥・出村 郷志・猪石 篤
プロトン駆動イオン導入法はナノ空間材料へのインターカレーションやイオン交換を促進する新たな手法であり結晶性の高いインターカレーション化合物の合成や固相反応法では形成できない準安定物質の合成に成功している.本稿ではこの手法によって得られたさまざまな化合物について紹介する.
笘居 高明・宮脇 仁・尹 聖昊・本間 格
近年注目されるナノシート材料作製に対し,近年 筆者らが開発を行ってきた,超臨界流体を利用した剥離プロセシングを紹介する.また,作製後のナノシートの構造分離プロセスについても紹介する.
菅原 徹
電子デバイスを印刷法によって製造する技術は,次世代の電子デバイス製造技術として,近年,精力的に研究されている.本稿では,太陽電池の緩衝層への応用に向けた有機金属分解法による酸化物コーティングと印刷法によって作製したデバイス特性を解説する.
古賀 大尚・長島 一樹・仁科 勇太
本稿では,農学系材料・技法である紙・抄紙法ならではの「構造設計技術」と「無機ナノ材料の複合化技術」を組み合わせた独自のアプローチによって,工学分野で注目される革新的機能紙を創出する異分野融合研究を紹介する.
冨田 恒之
蛍光体は波長変換材料の一種であり,その多くが可視光を発光することで照明やディスプレイに利用されている.本稿では人が見るための光ではなく,太陽電池等の光によって機能する材料やデバイスへの応用に向けた蛍光体の開発を述べる.
渡邊 厚介
高温域での焼結が必要な酸化物におけるナノ構造化は通常の固相反応法では困難である.そこで,100 nm以下の金属ナノ粒子をAlドープZnOバルク体中に分散させたナノ複合体の,ボトムアップによる合成手法を新たに開発した.本稿では,そのプロセスの概要と得られたナノ複合体の熱・電気輸送特性について報告する.
野本 貴大・岸村 顕広
低侵襲的な光線力学療法を実現するには,光増感剤をがん選択的に送達するキャリアが必要である.本研究では,そのような光増感剤デリバリーを指向し,無機物質のリン酸カルシウムと有機物質の高分子から形成されるナノ粒子の開発を行った.
三友 秀之・居城 邦治
ロッド状の金ナノ粒子が示す優れたプラズモン共鳴現象を有効利用するためには,粒子の集合状態や配向を制御することが重要である.本稿では,遺伝情報を担い手であるDNAを利用して粒子を配向固定化する方法の開発について紹介する.
長島 一樹・高橋 綱己・柳田 剛
単結晶金属酸化物ナノワイヤは他のナノ材料系には見られない3 次元構造自由度や多彩なナノ物性,大気安定性を有するナノ材料である.本稿では酸化物ナノワイヤの結晶成長に基づく構造・組成・機能の設計指針とデバイス応用例を紹介する.
龍崎 奏・筒井 真楠・横田 一道・谷口 正輝
体液中における生体物質(分子)の機能は,その物質形状に大きく依存しているため,液中に浮遊している生体物質の形状を解析することは非常に重要である.本稿では,ナノポアデバイスを用いた浮遊生体物質の形状の定量解析法について紹介する.
熊野 智之
熱光起電力(TPV)発電の実用化に向けては,熱から特定波長のふく射へのエネルギー変換効率を高めることが課題である.本稿では,波長選択エミッターとしての希土類酸化物膜に注目し,構造の分析結果および異分野融合による応用可能性について紹介する.
青木 崇志・植田 修司・中村 知雄
微細なススの捕集効率が高くかつ,低圧損,高温の排気に耐え十分な耐熱衝撃性を有する革新的なガソリンパティキュレートフィルタ(GPF)について
松岡 鮎美・熊澤 猛・吉澤 友一
独自の常圧焼結技術と薄型複雑形状を成形・焼成する形成技術を組み合わせ,緻密かつ複雑形状を有する常圧焼結炭化ホウ素製高性能スピーカー用振動板の実用化に成功したので紹介する.
野田 岩男・西村 和真・岩本 幹生
人工関節等を使用する整形外科手術における術後感染は大きな問題である.そこで筆者らは,銀の抗菌性を利用した抗菌コーティング技術を開発し,抗菌性人工股関節を実用化した.本稿では,本技術の開発と特性等について述べる.
伊藤 満