平尾 一之
光や色に関わるセラミックス材料は顔料,非線形光学材料,ディスプレイ用およびLED用蛍光体,照明用蛍光体,医療診断ツール,光センサー,インフォメーションサイネージに至るまで,幅広い分野で利用されており,今後広く普及が実現されれば,大きな社会的貢献と新規市場の創出が見込まれています.フォトセラミックスの発展には酸化物や窒化物等のセラミックス材料の開発が鍵となっており,ますますのセラミックス材料合成および成膜技術等の技術革新が望まれています.本特集では蛍光体ナノ材料から無機顔料,そしてディスプレイ等さまざまな用途で利用が期待される光と色に関わるフォトセラミックスについて,基礎から応用までを見据えた幅広い観点で特集を企画しました. (特集担当委員:井上幸司)
岡 亮平・増井 敏行
新しい環境調和型の着色無機顔料の開発を目指し,SrY2O4のY3+サイトにCe3+イオンを固溶させた試料を合成し,得られた試料の色彩を評価した.試料の色はCe3+イオン濃度に依存し,白色,黄色,赤茶色の順に変化することを明らかにした.
早川 知克・磯谷 雅斗・ジョンロネ デクレア・フィリップ トーマス
耐候性・耐紫外光特性に優れ,長期的な使用が可能な波長変換層に優位性があると考え,研究開発を進めている.
竹田 康彦
結晶シリコン太陽電池の変換効率を向上させるためのEr3+添加アップコンバージョン蛍光体に,シリコンにもEr3+にも吸収されない光を吸収し,そのエネルギーをEr3+に移動させるNi2+を共添加することにより,1.1~1.6㎛光から0.98㎛光への変換を実現した.
山梨 遼太・渋田 裕介・戸田 健司
水により加速する固相反応(Water-Assisted Solid-State Reaction)によるナノ粒子の合成および物性評価と,反応メカニズムについての考察を報告する.
松嶋 雄太・福島 大輔・松田 智美
本稿では,紫外線検知の応用例や酸化亜鉛を紫外線検知受光層とする際の課題を紹介した後,筆者らが開発中のUVセンサーを例に,良好な応答を実現するためのポイントを概説する.
岡元智一郎・谷口 惇浩
固相反応法によりPr添加Ca2Al2SiO7の単相を作製した.PL測定から波長240nmの励起により270および310nmにピークを有する強い紫外発光および1000秒以上の紫外残光を観測した.
伊豆 典哉・内田 敏雄・伊藤 敏雄・申 ウソク・飯島 正和・吉田 邦俊
コロイドを使った構造色に関して,ポリマーやシリカを使った研究が主だったが,最近,分散性に優れ,より屈折率が高いコアシェル型セリア微粒子が開発された.ここでは,この微粒子を使った構造色に関する研究を紹介する.
石垣 雅・西原 英治・岸本 真幸・戸田 健司・大倉 央・大観 光徳
ルビー(Al2O3:Cr)蛍光体粉末を分散させた農業用波長変換シートを開発した.本シートを用いてホーリーバジルを栽培したところ,収穫乾物重とポリフェノール含有量がともに約10%増加した.
中野 裕美・門脇 慎一
Li-Ta-Ti-O系固溶体を新規蛍光体の母体材料として用い,合成した赤色蛍光体材料の発光特性と応用に向けた評価結果について紹介する.市場規模の拡大に伴い,多様な蛍光体材料の特性が要求され,本材料の応用分野への広がりを期待している.
黒木 雄一郎・澤 蒔音
酸化チタンは多様な用途に使われている代表的な機能性材料である.最近,クロムを添加した酸化チタンが紫外線励起により赤外発光を示すことが報告された.本稿では,クロム添加チタニアの合成と発光特性を評価し,セキュリティインクとしての応用について紹介する.
和田 憲幸・井上 幸司・眞田 智衛・小島 一男
マンガン(II)イオンを含有したスピネルセラミックスの緑色蛍光について,Mn2+含有Mg2SnO4逆スピネルを例として,その蛍光および励起スペクトルと高輝度化について解説し,今後の展望について紹介します.
下野 功
本稿では,はじめにホタテ貝殻の蛍光に関わるこれまでの研究結果を紹介し,次にこれを食品および医薬品添加物として利用することを目的に行なった調査の結果を示した後,最後にサプリメントや医薬品の真贋判定の鍵となる識別物質(PCIDs)への応用を提案する.
本村 玄一・都築 俊満・亀山 達矢・鳥本 司・上松 太郎・桑畑 進
元素組成比と粒径で発光波長を制御可能な低毒性量子ドット材料ZnS-AgInS2固溶体(ZAIS)を用いて量子ドットEL素子を作製した.ZAIS量子ドットに電荷輸送材料を混合した発光層を有する素子は,発光開始電圧2.4V,外部量子効率1.9%のZAIS量子ドット由来の赤色発光を示した.
高橋 儀宏・寺門 信明・尾上 紀子・篠崎 毅・藤原 巧
本研究では,生体深部や頭蓋内の温度計測を想定し,ZrO2残光体をプローブとした残光および輝尽発光特性を調査した.また,近赤外領域の励起光が骨を透過した際の輝尽発光について検討し,骨透過後の近赤外光における明瞭な輝尽発光を確認した.
藤本 克己・白露 幸祐・山本 浩誠・三谷 彰宏
角速度検出用の圧電振動ジャイロと,表面実装可能な空中超音波センサは実用化・応用の実績を上げた.圧電セラミックスの有用性を最大化する切り口として,この類型化は特に有効と考えているので紹介する.
蒲地 伸明
CA系磁器の開発,実用化によって,焼成温度により軟化変形量が変化するという磁器誕生以来の課題を解決することに成功した.
鈴木 卓弥・大西 久男・野中 篤・村田 尚義
大阪ガスの薄膜メタンセンサをベースに,富士電機が保有するMEMS技術を用い,MEMSメタンガスセンサを共同で開発した.
加藤 雄一
大場 史康