今橋 逸夫
応力や電場,磁場等の外場エネルギーを援用する焼結プロセスは,従来法では焼結が難しい材料を短時間で高密度化でき,微細組織・界面構造・結晶配向を制御できる等,付加価値の高い材料を高速に作製できます.なかでも,通電と加圧効果を併用したパルス通電加圧焼結(または放電プラズマ焼結)は,装置の開発・普及が進むとともにプロセスの低温化・高速化等の優位性が広く認められてきました.また,最近注目されるフラッシュ焼結は高電界を印加することで瞬時に焼結が完了する等,これらの高速焼結プロセスは,近年のバルクセラミックス研究の進展に大きく貢献しています.本特集では,「通電焼結」技術による各種構造・機能性セラミックス開発への応用と最新の研究動向を紹介します. (特集担当委員:且井宏和)
鴇田 正雄
通電加圧焼結を代表する放電プラズマ焼結(SPS)法は日本で生まれた純国産技術である.省エネ・環境低負荷型・迅速・反応性焼結・電磁エネルギー支援等を特徴とする新しい材料合成技術でセラミックス/金属系ナノ材料、複合系の傾斜機能材料等さまざまな分野でその有用性が実証され今日産業利用の段階にきている.本稿はSPS法の概要, SPS生産システムおよび大形セラミックス焼結の現状と将来性について紹介する.
吉田 英弘・山本 剛久
通電焼結の中でも,高電界を印加することによりわずか10秒程度で緻密化が完了するフラッシュ焼結が注目されている.フラッシュ焼結によるセラミックス緻密化の実例と,これを利用した関連技術について最近の成果を紹介する.
大柳 満之
焼結助剤なしで緻密に焼結できる積層不規則構造を持つSiCの合成と放電プラズマ焼結について解説し,焼結体の特徴について紹介する.
南口 誠・Nguyen Huu Hien・Dang Quoc Khanh
パルス通電焼結により作製した透光性酸化物セラミックスの微細構造,特に原料粉末の凝集に基づくマクロな欠陥,粒成長に影響する温度履歴による粒成長等について述べた.
黒澤 俊介・原田 晃一
通電焼結法(SPS法)による透光性セラミックスシンチレータの開発について,シンチレータの基礎的な解説,およびセラミックス体として研究する背景等も含めて説明する.
後藤 孝・且井 宏和
SPSを用いてもダイヤモンドを焼結することはできないが,ダイヤモンド粒にCVDによりSiCをコーティングし,SiO2を結合材に用いることにより,1873 Kで黒鉛への変態のない39 GPaの硬さの焼結体を作製することができる.
高木 健太
低熱負荷焼結法である通電焼結は,易熱分解性の窒化物磁石粉末の焼結固化法として期待される.本稿ではSm-Fe-N磁石を中心に,通電焼結法による窒化物磁石の研究を紹介する.
村松 尚国・後藤 孝
通電加圧焼結(SPS)によりCu‐Zr共晶合金を作製し,二相分散組織とすることで高い導電性や耐摩耗性が得られた.Cuと本共晶合金との複合焼結体に応用し,溶接電極としての実用性や経済性について検討した.
井藤 幹夫
パルス通電焼結法において,絶縁性のダイを用いた直接通電焼結により酸化物熱電粉末の焼結を行った.全パルス電流を試料圧粉体に印加することで緻密化が促進されることを明らかにし,新規熱電材料合成プロセスとしての可能性を見いだした.
北川 裕之・井戸 翔太・鈴木 絢子・菊池光太郎
周期的一軸加圧下でのパルス通電焼結(PCS-cyclic)によるBi2Te3系熱電材料の結晶配向,結晶粒サイズ制御に関する研究内容について概説する.
且井 宏和・李 頴・後藤 孝
SPSによりTiCとZrCの混合粉末を高密度に焼結するとともに単一の固溶体が形成し,熱時効による相分離現象を利用することでナノ~サブミクロンの微細な組織を有する緻密な非酸化物系複合材を作製できる.
Mirabbos HOJAMBERDIEV