今月のオープンアクセス記事
越崎 直人・石川 善恵
山本 大吾・塩井 章久
提供:(東北大学)川下 将一
「がんの動脈塞栓治療に貢献するマイクロ粒子」
尾﨑由紀子
従来のセラミックス粒子は,焼成プロセスに用いられることを前提とし,その大きさや形状に着目した制御技術が重要視されてきました.一方で,近年,セラミック粒子自体を活用し,医療,電子デバイス,触媒,等のさまざまな応用分野に適用する研究が進んでいます.それらのセラミック粒子では,微小なマイクロオーダーの粒子内における,化学組成,組織構造を,新たな合成技術や複合化技術によって高度に制御することで,従来のセラミック粒子では得ることのできない,高い機能やユニークな機能を発現することが報告されています.本特集では,そのような高機能マイクロ粒子を創製する技術,および,その応用例について紹介します. (特集担当委員:竹内あかり・芦澤宏明)
小島 隆
金属アルコキシド法によるチタニア系粒子の合成時における,粒径の均一化と粒子の球形化に関する工夫を紹介する.また,この手法によって得られる粒子の特性を利用した多孔化手法と複合酸化物粒子合成についても述べる.
越崎 直人・石川 善恵
液中レーザー溶融法によるセラミックス系の結晶性サブマイクロメートル球状粒子の作製法,生成粒子の機械的特性測定,大量合成法への展開,に関する最近の研究について紹介する.
橫井 敦史・Wai Kian TAN・武藤 浩行
静電相互作用を用いた粒子集積技術(複合粒子および複合顆粒)として,ソフトプロセスによる粒子設計の手法に関して説明する.提案する手法は表面電荷の調製のみで粒子設計することができ,革新的モノづくりの基礎技術となる.
山本 大吾・塩井 章久
二種類以上の反応物質を混合して粒子を作製する場合,迅速に混合することが粒子合成手法の一つのセオリーとなっている.一方で,混合手法として反応物質の拡散を利用すると,従来のプロセスとは全く異なった興味深い微粒子が時空間的に形成されていく.本稿では,この手法に関する筆者らの成果について紹介する.
井上 義之
乾式粒子複合化は,溶媒や乾燥工程が不要であり,環境にも優しく,多くの分野で工業的に使用されている.この技術によってナノ粒子等を,サブミクロンからマイクロメートルサイズの粒子上に固定化し,粒子群の微細構造を制御し,製品性能を向上することができる.
鈴木 義和・阿部 浩也
本稿では,三次元ネットワーク構造を有する多孔質球状顆粒の合成と高温その場観察,および,それらの知見を活かした上での簡便なサイズ制御を紹介する.
石原 嗣生
直径1mm程度の細長いガラス管内部に蛍光体を塗布した「プラズマチューブ」からなる水銀フリー紫外光源の開発に取り組んでいる.Xe放電励起で高効率にUVC発光し,塗布に適した数ミクロン程度のPrF3粒子の水熱法による作製を紹介する.
渡部 光徳
ゼオライトは,吸着,イオン交換,触媒機能を有する物質として,広く工業的に利用されている.石油精製において,流動接触分解,水素化触媒,異性化触媒,吸着用途等,ゼオライト触媒は重要な役割を果たしている.本稿では,石油精製に関するゼオライト触媒技術に関して述べる.
三宅 浩史・廣田 雄一朗・西山 憲和
乾燥ゲルを水蒸気下で結晶化させる「ドライゲルコンバージョン法」により,種々のゼオライトを合成してきた.本手法では,通常の水熱合成では難しい異種元素をゼオライトの骨格に導入することが可能である.本稿では,種々のゼオライトの合成手法の開発およびその触媒特性を解説する.
岡田 友彦
非晶質シリカ表面でのスメクタイト様層状ケイ酸塩の結晶成長に関する研究例を紹介する.シリカ粒子を目的結晶の原料を含む水溶液と接触させ,塩基性条件で加熱すると,シリカ表面で層状ケイ酸塩の微結晶が選択的に成長し,表面は結晶で密に覆われる.
川下 将一
数十~数百ミクロンの微小球は,カテーテルによってがんの近傍の動脈内に送り込まれ,動脈を塞栓し,そこから抗がん剤を放出する等してがんを治療できる.本稿では,がん(特に肝臓がん)の経カテーテル動脈塞栓治療に貢献し得る微小球をいくつか紹介する.
薮塚 武史
環境調和型アパタイトカプセルの生体模倣環境を反応場とした合成法の確立に取り組んでいる.本稿では,薬物担体等の先進医療材料や固定化酵素キャリア等,各種生体・環境調和型機能性材料としての応用を指向したアパタイトカプセルの開発例を紹介する.
辰巳砂昌弘・林 晃敏・作田 敦