加藤 一実
セラミックス材料の多くは,ご存知のように結晶性の無機金属化合物により構成されています.そのため,新しい結晶やその育成技術の研究・開発は,材料性能の向上だけでなく,これまでにない特性の発現にも大きな役割を果たしています.欠陥低減や不純物除去による結晶の高品質化,結晶配向・結晶面制御,形状制御あるいはそれら結晶成長の学理構築を目指す研究は,セラミックス材料開発においても重要なテーマのひとつです.本特集では,さまざまな結晶あるいは結晶成長技術について,当該分野でご活躍されている方々に,その最近の研究・開発動向についてご執筆いただきます. (特集担当委員:我田 元)
櫻木 史郎
半導体,金属等の原料は,表面に水分吸着や酸化膜で覆われている.これらの単結晶を作成した場合,融液がるつぼ材と反応して濡れや結晶の固着が起き,るつぼ材からの汚染等高品質単結晶が得られない.半導体,金属等の結晶作成に取り組むには,この課題を克服することが必須となり,これを解決する有力な方法が,本稿で述べる溌液化プロセスである.
今西 正幸・森 勇介
液相成長法であるNaフラックス法を用い,高品質かつ大口径GaNウエハを作製.近年は気相成長法であるHVPE法と組み合わせた厚膜成長(バルク化)も実施しており,その取り組みの詳細について本稿で述べる.
宇治原 徹
次世代パワーデバイス用半導体であるSiCは,高品質結晶の実現が望まれている.そこで期待されているのが溶液法である.本稿では,高品質結晶成長がなぜ可能か,本格的なバルク成長技術にまで高めるための課題を概観する.
宇田 聡・黄 新明・坪田 毅
外部電場の印加には静電場印加と電流注入の2種あり,これらは明確に区別されなければならない.本稿ではこの2種類の電場印加による単結晶成長の操作について紹介する.
吉村 政志・森 勇介
次世代レーザー加工技術として注目されている波長300nm以下の深紫外領域の波長変換を担うホウ酸系非線形光学結晶について,候補結晶の国内外の研究動向や筆者らの開発成果についてまとめる.
木下 智嗣・望月 圭介
TSMG法によるサファイア育成について紹介する.また,同法で育成した高純度サファイアならびに不純物添加サファイアの光透過特性について述べる.
手嶋 勝弥・鈴木 清香・大石 修治・是津 信行
溶液からの結晶成長の一種であるフラックス法を用いて,大型結晶粒子の育成にチャレンジした.結晶成長の指導原理を理解し,活用することで,さまざまな機能性結晶粒子の大型化を可能にした.
柳澤 和道
二つの原料水溶液を水熱条件下で混合して反応を開始させる高温混合水熱法を開発した.この方法により結晶性の高い水酸パタイト結晶が合成でき,Mgの固溶限やアパタイト構造中に二つある金属イオン位置の占有率を決定できることを示した.
冨田 大輔・斉藤 真・包 全喜・石黒 徹・秩父 重英
本稿ではアモノサーマル法について概説し,酸性アモノサーマル法によるGaN単結晶育成の最近の成果について紹介する.
井上 真司
宝石の魅力を多くの人に享受してもらいたいとの思いで始めた京セラの人工宝石の開発を例に筆を進め,窯業や宝飾業界の発展に僅少でも寄与できればと願う.
内山 潔