安藤 正美
環境問題への取り組みから高い関心を集めるエネルギー関連デバイスや,社会イノベーション促進に向けた人間工学に基づくウェアラブルデバイス,IoT,AI関連の研究開発では,有機と無機の接合や異種材料との複合化などが求められ,素材となる原料や材料は,さらに高品質なものへと進化することが期待されています.本特集では,これらの要求に応えようとするセラミックスの合成法や堆積技術の「低温化」や「常温化」に焦点を当て,水熱合成法を活用した結晶育成の高度化・高品質化・微細構造制御,最新の合成法や堆積技術,転写技術,それらを活用したデバイス開発等を紹介します. (特集担当委員:鈴木宗泰)
牛島 洋史
印刷や塗布の技術を用いてフレキシブルなデバイスを作製するための工夫と,そうして作製されたデバイスの使い途について,IoT時代の到来とともに訪れるパラダイムシフトを予想しながら考えてみた.
川上 祥広
低温堆積技術であるAD法で鉛フリー圧電材料であるBaTiO3厚膜をステンレス基板上に直接成膜し,センサ,振動発電デバイスへの応用を検討した.AD法を用いることで電極としてPtを使用しなくても非鉛圧電デバイスとして機能することが確認された.
白石 貴久・木口 賢紀・今野 豊彦・舟窪 浩
水熱法が持つユニークな特徴を活かした(K,Na)NbO3基圧電体膜の製膜結果について紹介するとともに,“水熱製膜”の持つ新たな可能性について述べる.
舟橋 修一・木村 雅彦・白露 幸祐
従来,1000℃以上で通常焼結されていたものと同様の酸化物バルク体が,100~350℃の温度で得られることを特徴とするコールドシンタリング法について,研究例を紹介し応用可能性を示す.
和田 智志・上野慎太郎・藤井 一郎
本稿では,300℃以下の低温でナノヘテロ構造を有する電子セラミックスを作製する方法としてのソルボサーマル固化法の原理を示すとともに,本方法を用いることでナノヘテロ構造を持つ電子セラミックスの作製結果について紹介する.
渕上 輝顕・柿本 健一
ナノ粒子はセラミックスの低温合成の粉体として有望視されているが,生産性や回収・分散性等、実用上で多くの課題がある.本稿では,粉体表面に反応性の高いナノ構造を形成させる新たな液相プロセスについて紹介する.
萩原 学・藤原 忍
優れた特性を示すビスマス系非鉛圧電セラミックスの作製には焼成過程におけるビスマスの揮発の抑制が重要である.本稿では,水熱法による低温合成を活用することで高品質なチタン酸ビスマスカリウムセラミックスの作製を実現した事例を紹介する.
加藤 一実・板坂 浩樹・髙田 瑶子・三村 憲一
ナノキューブは高い結晶性を備え,自己組織化により秩序配列して工事の秩序構造へと発展することができる.単独粒子としても集合体構造としても,既存機能の延長線上にない非連続的で目覚ましい機能を発現する可能性を秘めている.
戸田 健司・渡邊 大・星 司・山梨 僚太・上松 和義・佐藤 峰夫
当研究室が開発した新奇合成法であるWASSR法の応用面への展開について紹介した.高温での焼成を必要としないことから,均一なナノ粒子の形態で化合物が得られる.酸化物だけでなく非酸化物への応用も可能である.
西川 博昭・馬谷 真司
機能性酸化物のエピタキシャル薄膜や単結晶薄膜は,一般に高温が要求されるため,ポリマー基板への成長は容易ではない.本稿では高温耐性の基板上へ作製したエピタキシャル薄膜をポリマー基板に転写する技術を紹介する.
土屋 哲男・中島 智彦・山口 巌・鵜澤 裕子
赤外センサ,サーミスター等のセンサやサーモクロミック,さらにはプラズモニクス等,光学薄膜応用に有用な酸化バナジウム膜の多結晶膜,エピタキシャル膜低温成膜法を中心に紹介するとともに,最近開発したナノ粒子と金属有機化合物のハイブリッド溶液を用いた光反応によるフレキシブル膜の合成について解説する.
矢野 豊彦
中村 真紀
Fabien Grasset