水野 賢一
スマートフォンに代表される電子機器の軽薄短小化,半導体の高発熱密度化,ファンレス化等や車載における更なる安全対策により,熱設計(放熱や断熱)が不可欠となっており,その難易度も飛躍的に向上しています.本特集では,熱設計・熱対策課題を解決する,最新の放熱材料,断熱材料,フィラー材料応用およびシミュレーション・評価技術について紹介します. (特集担当委員:古賀英一)
吉村 進
ポリイミド等の縮合系高分子の熱分解・グラファイト化により得られたフレキシブルなグラファイトトシートは10μmの薄膜で高熱伝導性 (~2,000W/m・K) を有するため,超小型ディジタル機器の熱対策,放熱設計にその特徴を発揮している.
高石 大吾・稲田 博文・荒川 裕也
放熱部材・ヒートシンクをターゲットとした,高放熱性セラミックスの熱伝導率向上および放射放熱特性に関する基礎的な検討を紹介する.また,簡易評価システムを構築し,これを用いた各種基板材料の放射放熱による温度上昇抑制効果(放射放熱特性)の評価手法の検討についても報告する.
小林 亮太・岡崎 裕也・福士恵美子・橋本 怜
AlNセラミックスの組織制御の一環として,アスペクト比の大きな針状単結晶であるAlNウィスカーを高熱伝導核として含むAlNウィスカー/AlN複合セラミックスの作製と評価を実施した.
村上 睦明
高分子フィルムから製造された高熱伝導グラファイトシート(GS)を使用した熱制御(管理)技術について解説した.市販されているGS(厚さ10~50μm)の熱拡散フィルムとしての基本特性を説明した.GSは銅の4倍の熱伝導率を持ち,現在携帯電話等の電子機器で広く使用されている.一方,新しく開発されたGS(厚さ0.5~3μm)は優れた物性を有しており,高性能の層間熱接合材料としての利用が期待できる.
會澤 守・川瀬 昇・中西 和樹・金森 主祥
ゾル-ゲル法を用いた有機-無機ハイブリッドエアロゲルの開発とその断熱材としての応用について検討を進めている.ネットワークの化学組成や細孔構造を最適化することによってエアロゲルの簡便な製造法開発が可能となってきた.
依田 智
産総研と(株)イノアック技術研究所で開発中の柔軟性・成形加工性を持つ高性能断熱材“フレキシブルエアロゲル”について,その性能や特徴、量産化を目指した製造プロセスについて紹介する.
阿多 誠介
熱源からヒートシンクへの熱を効率よく輸送するための熱界面材料用途として,ゴムに炭素繊維とカーボンナノチューブを添加し熱伝導性(80 W/mK)と柔らかさを両立した材料を開発した.
舟木 剛・福永 祟平・沓水 真琴
ワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーモジュールは高電流密度化を目指しており,同じ電流に対してパワー半導体デバイスの面積が小さくなる.このため電流密度だけでなく,生じた損失による発熱密度も大きくなり,より効果的な放熱による熱管理が求められている.本稿ではこのような高発熱密度となるパワーモジュールにむけた,グラファイトを用いた放熱基板について述べる.
有賀 善紀
近年の小型チップ部品の小型化・高電力化により,過度な温度上昇による熱トラブルが増加している.基板の放熱性がチップ部品の温度上昇に与える影響を具体事例で示し、基板放熱主体の熱設計に適した温度規定について述べる.
服部 将也・植松 秀典・飯室 善文・村石 智光・臼井 良輔
TIM用高圧縮性グラファイトシートを用いたIGBTモジュールの応力解析および熱解析を行った.シート厚みと圧縮特性によるチップ温度マップを計算し,チップ温度のばらつきを抑制しつつ温度を最小化する設計領域を予測することを可能とした.
菅野 了次
川村 知栄