今月のオープンアクセス記事
有岡 雅行
材料開発において構造・組織・形態の材料設計「マテリアルデザイン」と,それを生み出すための「プロセッシングデザイン」は,表裏一体であり,革新的な材料創成のためには共に不可欠な両軸です.日本セラミックス協会では 2016 年の第 29 回秋季シンポジウムにてプロセッシングデザインをコアとした第 1 回の特定セッション「マテリアルデザインとプロセッシングデザイン」が開催されるとともに,協会研究会として“マテリアル・ファブリケーション・デザイン研究会”(通称 MFDs 研究会)が発足しています.MFD の略語には,Manifold(多様・多方面・融合),Multifunctional Design(多機能),Manufactured Design(もの創り),Material Flow Design(物質循環),Material Fusion Design(材料融合)といった材料デザインと合成デザインの要素(MFDs)が込められています.種々の材料分野の垣根を横断し,多様なプロセッシングデザインを学ぶことは,革新的な材料創成と問題解決につながると期待されます.本特集では,新しい「マテリアルデザイン」の実現を目指した,多彩な「プロセッシングデザイン」に焦点を当て,基礎から応用へと最新の研究成果についてご紹介いたします. (特集担当委員:後藤知代,編集協力:林 大和(東北大学))
林 大和
イノベーション材料実現のためには,革新的な材料のプロセッシングデザインが重要である.そのためには,セラミックス材料分野においても多他分野にも学び,コネクションし融合する能力が重要である.
木村 禎一・末廣 智
アルミナのレーザー焼結では,数10秒から1分程度の短時間で焼結体を得ることができる.そのメカニズムを明らかにするため,これまでの実験結果をもとにレーザー照射下での発熱・焼結機構について考察した.
小泉雄一郎・鐘ヶ江壮介・藤田 武志
PBF型金属AMで製造された金属材料の特徴とその制御に関する筆者らの研究とともに,最近の取り組みとして,結晶構造を模倣した相転移する格子構造体の創製について紹介する.
中村 貴宏
高エネルギーの超短パルスレーザー光を強く集光することで焦点付近において極短時間の高強度反応場が形成される.本稿ではこの特異な高強度反応場を物質合成に用いて通常では作製が困難な構造や組成がデザインされた合金ナノ粒子の合成について紹介する.
加藤 邦彦・白井 孝
シングルモードマイクロ波によって誘起される特異反応場を用いた機能性セラミックス粒子の新規合成手法(今回は特に,非熱的平衡反応場およびにナノ表面改質の実現)について紹介する.
久保 正樹・塚田 隆夫
離散要素法に基づく液相三次元粒子運動シミュレーションを用いて,有機溶媒中における表面修飾ナノ粒子の分散・凝集状態ならびに粒子配列体の構造形成について検討し,表面修飾ナノ粒子をデザインするための指針を提示した研究を紹介する.
清野 智史
本稿では,放射線化学反応を利用したナノ粒子固定化技術の概要について触れた後,これまでに実施してきたマテリアルデザインの実例を紹介する.
友重 竜一
爆薬が発する衝撃エネルギーを材料加工に応用するさまざまな方法について紹介するとともに,筆者が携わってきた粉体の熱間爆発圧縮および,最近の試みであるセラミックスと金属の熱間爆発圧接について紹介する.
横井 敦史・Wai Kian TAN・武藤 浩行
静電相互作用を利用した粒子集積技術を紹介する.これにより得られる集積粒子(複合粒子・複合顆粒)は,複合材料の微構造制御のみならず次世代モノづくりに大きく貢献することができる.
林 大和
超音波とマイクロ波は,特殊なエネルギーでありながら,超音波洗浄機や電子レンジなどの家電製品で誰にでも利用できる装置である.これらの特徴を生かし,SDGsも含む新しい材料プロセッシングデザインの概念と応用について解説する.
吉岡 聰
高速重イオン照射によってスピネル構造MgAl2O4にナノ構造を作製した.特に局所構造解析をX線吸収分光法とその理論スペクトルによって行った.
正井 博和
ランダムなネットワーク構造を有する非晶質材料は,作製条件に依存した多様な物性・構造を呈する.本稿においては,酸化物ガラスにおける作製条件と物性・構造との相関を過去の報告を基に概説する.
津田 哲哉・阪上 宏樹
イオン液体は,難揮発性,難燃性,非帯電性,良好なイオン伝導性・電気化学安定性などの特徴を兼ね備える液体塩であり,これを利用することで新奇な材料プロセッシングが提案できる.本稿では,その例のいくつかを紹介する.
小林 渉