稲垣 伸二
レーザー発振器の高性能化や低コスト化,およびその周辺技術の進歩にともない,レーザー装置・技術は情報通信,光学機器,材料加工,医療,美容等,各分野への応用が進み,市場規模は今後も拡大すると予想されています.材料加工やモノづくりに関する先端の材料科学分野においても,電子デバイス,自動車関連部品,生体材料における溶接や接合,切断,リソグラフィやパターニング,3Dプリンター等,多様な材料形態・種類・用途に対して重要なテクノロジーに成長してきました.また加工や異種材料接合,パルスレーザー堆積法等のレーザーを利用したプロセスはセラミックス分野でも広く応用されています.一方では,レーザー発振を可能にする透光性セラミックスが開発される等,今後もレーザーテクノロジーとセラミックスの繋がりはますます強くなるでしょう.本特集では,レーザーとの相互作用を利用したセラミックスプロセスや診断技術,さらには,レーザー技術の進展に貢献するセラミックス材料開発に関する研究を紹介します. (特集担当委員:且井宏和)
平尾 一之
やがて訪れると考えられる近未来のレーザー社会において,最先端レーザー技術がSDGs(地球持続型社会目標)の達成に大いに役立つものと考えられている.本稿では先ずレーザー発振の基本原理を簡単に述べ,セラミックスやガラス材料への応用の可能性について紹介する.
佐野 雄二・秋田 貢一
窒化ケイ素にレーザーピーニング処理を施し,表面性状および機械的特性の変化を調べた.その結果,表面から約60μmの深さまで圧縮の残留応力が形成され,破壊じん性および曲げ強度が向上することを確認した.
神月 靖
100㎛径以下の微細層流ウォータージェットにより,光ファイバーと同じようにレーザーを材料に導く加工方法,水レーザーでは,熱影響を抑制できるばかりではなく,狭小かつ厚い材料でも切断幅が変わらない切断加工,デブリ,ドロスのない清浄なレーザー加工ができる.
桐原 聡秀
セラミック直接造形プロセスとして,基礎原理から応用実施まで一連の知見を紹介する.
野村 直之・周 偉偉・周 振興・吉見 享祐
レーザ三次元積層造形を用いた超耐熱MoSiBTiC合金の積層造形への取り組みについて,使用粉末の準備から積層造形体の作製および評価について最近の研究内容を紹介する.
瀬知 啓久・永塚 公彬・松 康太郎・中田 一博
本稿では,活性金属ろう材を使用したセラミックスと金属のレーザーブレージングの特徴や接合事例,最新の技術開発動向について紹介する.
伊藤 暁彦
レーザーを援用した化学気相析出法における高温構造用および機能性セラミックス材料の自己配向成長および高速エピタキシャル成長について紹介する.
高橋 拓実・多々見純一
本稿では,セラミックス材料に対するOCT観察の優位性と有望性を示すことを目的として,基盤的立ち位置であるAl2O3焼結体の内部構造の静的観察について,既報の内容を体系的に整理して紹介する.
池末 明生
光学セラミックスは単結晶を用いた固体レーザーでは実現できないハイパワー,高機能化、ビーム品質向上に寄与し世界レベルでの研究が行われている.多結晶セラミックスから得られた知見により,光学理論を見直す時期に差し掛かっている.
平等 拓範
本稿では,レーザセラミックスが与えたインパクトとその限界についての議論から,機能性非線形光学素子として発展した擬似位相整合(QPM, Quasi-Phase Matching)を考慮し,マイクロドメイン制御による機能発現として統合された概念となりつつあるマイクロ固体フォトニクス(Micro Solid-State Photonics)につき,最近の進展を含めながら概説したい.
古瀬 裕章・堀内 尚紘・金 炳男
本稿では,新しいタイプの非立方晶系レーザーセラミックス材料について紹介する.結晶粒を光の波長の約10分の1に制御することで,結晶方位がランダムであってもレーザー発振に至る程の高い光学品質が得られる.
横井 太史