堂免 一成
近年の合成技術の進展により,ナノ粒子(0次元),ナノチューブ(1次元),ナノシート(2次元)など,サイズ,形態を高次制御したナノマテリアルの合成が報告され,エレクトロニクス,環境・エネルギーなど,多くの技術分野の発展に資する「ものづくり技術」として期待されています.こうしたナノマテリアル単体は特異機能を示す新材料として興味深いところでありますが,これらを構築単位として自在に集積化,複合化し,0次元~3次元へとボトムアップ集積が可能となれば,現行技術で実現できない高次機能の設計・発現の道が開かれます.実際,1,2次元材料と0次元材料を組み合わせると,単純な材料の足し合わせや整数次元で説明できない「超次元」とも呼べる機能が発現することが明らかになっています.本特集では,「ナノマテリアルを創る,観る,操る」にかかわる第一線研究者に,最新の研究例について紹介して頂きます. (担当委員:長田 実(名古屋大学))
速水 真也
低次元材料であるナノ粒子(0次元)、ナノチューブ(1次元)、ナノシート(2次元)などの次元制御されたナノ材料をさらにメタ次元制御した超次元科学の学術分野を提案し、超次元マテリアルについて紹介する。
馬 仁志・佐々木高義
本稿では, 様々な金属イオン組成を持つ層状複水酸化物ナノシートの精密合成とそのレドックス活性,触媒能,イオン伝導特性などを活かした多彩な機能開発について紹介する.
成田 明光
本稿では、有機・高分子化学の手法を用いた、0次元から2次元までのカーボンナノマテリアルのボトムアップ精密合成について、グラフェン量子ドットとグラフェンナノリボンを中心に紹介する。
伊田進太郎
2 次元材料を基盤材料に用いて超次元材料を創成する概念とその方法および、超次元構造がもたらす触媒機能の展望について紹介する。
松田 潤子
環状検出器を用いた走査透過電子顕微鏡(STEM)法をナノシートなどの低次元材料に適用し、原子配列や化学結合状態を明らかにすることで、超次元的な機能発現のメカニズム解明を目指す。
二宮 翔・西堀麻衣子
X線吸収分光(XAS)法は、機能を発現する動作環境下での、着目した原子を中心とした平均局所構造・電子状態に関する情報を得ることができる。筆者らのナノクラスタ構造研究を例に、XAS法による局所構造解析の特徴と具体的な解析法について紹介する。
高橋 和敏・今村 真幸・山本 勇・東 純平
放射光とレーザーを組み合わせて利用可能なビームラインを整備し、SiC上グラフェンの層数やドープ特性の評価とともに、グラフェン特有の偶奇分裂した鏡像準位のバンド分散とその電子寿命を決定した。また、Bi(111)上表面状態のフェルミ面マッピングでの円2色性を測定した。
塩田 淑仁
量子化学計算は今までに孤立分子や周期系の固体に適用され,その有効性が確かめられてきた.計算能力向上によって欠陥や不純物などを含む系においても評価が可能となり,特異な構造を有する材料の解析もアプローチできるようになりつつある.
北浦 良
低次元材料とくに二次元系の科学が大きく進展するなか、新たな材料探索とくに「二次元物質を積層・接合することによって新たな材料を生み出す試み」 が活発化している。本稿では、これら二次元系の積層・接合を超次元という観点で捉えつつ、最近の話題を紹介する。
谷口 貴章
無機ナノシートにおいて、界面制御により、大幅な物性制御、さらには新機能開拓が可能となる。ここでは、その実例として、酸化物ナノシートにおける界面誘起発発光/磁性、MoS2における界面誘起光触媒活性について紹介する。
杉本 渉・滝本 大裕・秀島 翔
ナノシートを電気化学系へ応用する際には、固液界面の設計が重要であり、ナノシートの一次構造と積層させた三次元構造体が物性を支配する。本稿では、ナノシートおよびナノシート電極の性状に着目し、蓄電と電極触媒への応用を紹介する。
宮内 雅浩・近藤 剛弘
近年,我々は簡便な湿式法でホウ化水素シートを合成することに成功した.ホウ化水素シートは半導体的性質を示し,紫外線照射によって水素を放出することができる.軽量・安全・光応答性の水素キャリアとしての応用が期待される.
濱崎 喜仁
岡 亮平・増井 敏行
松野 昌幸(代表執筆者)・小川 泰弘・小野順三郎・野田 和聖・吉田 貴拓・草場 千鶴・松本 直樹・向後 泰宏・山本晋太郎・都築 正和・福田 謙一
久保 敏彦・青柳 伸宜・有田 茂博
馬屋原芳夫・藤田 俊輔・古山 忠仁・岩尾 克
久我龍一郎・平尾 宙・二戸 信和・坂井 悦郎
松本 祐・児玉 優・鈴木 道生
入江 哲司・佐藤 奈々・木村 壮志・杉原 洋亮
森川 健志