熊澤 猛
セラミックスコーティングは,エレクトロニクス,環境・エネルギー,機械・航空,医療・福祉など広範な分野において,製品製造やデバイスの性能向上にブレークスルーをもたらす技術として注目されています.今後,さまざまな分野で市場拡大が見込まれており,我が国のセラミックス業界が世界をリードし続けるためにも,コーティング技術の共通基盤となる物理化学現象の解明や,それに基づく技術開発,応用展開を積極的に推進する必要があります.これまでセラミックスコーティングは,産学官連携の観点からはホットなトピックであるものの,学術体系化は遅れており,コーティングの基礎,共通課題に関して議論する場が少ないという問題がありました.こうした交流の場を提供し,産官学の橋渡しをすべく,2017年に本協会の分野横断型研究体として,「セラミックスコーティング研究体(代表:明渡 純)」が発足されました.本研究体では,コーティングだけでなく,材料科学,物性物理,物理化学,材料力学,計測,診断,電気回路,モジュール,シミュレーションなどで活躍している産官学研究者を結集し,専門分野の枠を超えて学際的,横断的な研究交流を進めています.本特集では,セラミックスコーティングにかかわる第一線研究者に最新の研究例について紹介して頂きます.セラミックスコーティング研究体の成果に加え,コーティング分野における共通課題である「常温・低温プロセス,異種材料接合,界面制御」に関する新しい技術,潮流を感じて頂ければ幸いです. (特集担当委員:長田 実(名古屋大学),編集協力:明渡 純(産業技術総合研究所))
明渡 純
これまで2年間、セラミックコーティング研究体で議論してきた研究シーズを中心に、「接合による界面形成や結晶成長」という切り口で、セラミックコーティング技術の基礎と応用展開における課題と出口戦略を通して、その将来を展望する。
須賀 唯知・竹内 魁
異種材料の表面活性化接合は、イオン衝撃により表面の吸着層や酸化層を除去し、固体の表面エネルギーを直接利用することによって接触のみで常温接合する方法である。加熱が必要なく、接着剤やはんだを使わない接合が可能であることから様々な分野で適用が検討されている。
篠田健太郎・明渡 純
エアロゾルデポジション法並びにハイブリッドエアロゾルデポジション法の最新の動向を紹介すると共に緻密化の鍵を握る常温衝撃固化現象の解明に向けた取り組みを紹介します.
黒岩 芳弘
エアロゾルデポジション(AD)法で成膜されたチタン酸ビスマス強誘電体膜の配向と成膜に使用した出発原料粉末の化学結合との関連を高エネルギー放射光X線回折実験で調べ,AD法による成膜の仕組みについて議論した.
土屋 哲男・鵜澤 裕子・中島 智彦・山口 巌・野本 淳一・松林 康仁
本稿では、ナノ秒パルスレーザーの特徴を生かした光MOD法及び光スパッタ法によるガラス、金属、樹脂へセラミックス膜の結晶成長や酸素量制御における表面・界面制御について概説した。
中村 挙子
紫外光を利用した温和で簡便な表面化学修飾ナノコーティング技術による各種材料の各種官能基化、表面高機能化・界面制御技術、および本技術を利用した高強度異種材料接合技術への応用展開について紹介する。
長田 実
近年,ナノレベルで膜厚,膜構造を制御し,基材に新しい機能を付与することを目的としたナノコーティング技術が注目を集めている.本稿では,無機ナノシートをベースとしたコーティング技術について紹介する.
小川 和洋
遮熱コーティングにおけるボンドコート材料の化学組成を変化させることにより,高温下で生成する酸化物の形態を制御し,界面強度の飛躍的向上に成功した.
山本 哲也・古林 寛
異種材料接合界面制御の役割と効果について金属酸化物多結晶薄膜/アモルファスガラス基板での研究成果を紹介した. 目的は高キャリア輸送にあり,解決策として極性或いは鏡面散乱を呈する定温創成極薄介在層を挙げる.
秋本 順二
酸化物型全固体電池の実現のためには、リチウムイオンの拡散経路を確保すると共に、電極中の電子伝導性を両立させる電解質と電極界面の形成するための技術が必要である。本稿では、電解質・電極材料の最近のトピックスと共に、固体-固体界面を形成する最近の研究動向を概説する。
室谷 裕志
光学部品の光学特性の改善や波長制御等の目的で光学薄膜が用いられている。また、装飾用(加飾)分野でも、メッキにない質感から光学薄膜が用いられる。従来、光学特性・機械的特性・温度特性等などの面から光学薄膜の成膜基材にはガラス等の無機材料が用いられていた。近年、価格・重量・成形性等で優位なプラスチックの基板利用が増えている。プラスチックへ無機材料の光学薄膜を成膜する上での第一の問題点は成膜温度・アウトガス等の影響による膜ハガレ(密着性)である。そのため、様々な成膜方法が検討されており、その中でスパッタリングと真空蒸着を組み合わせた密着性の高い新しい成膜方法なども生まれている。この成膜法を含めて樹脂への成膜技術について述べる。
園川 沙織・鳩野 広典・長谷川綾子・石川 和宏
浴室鏡と水垢汚れ界面の反応を抑制するために,鏡表面にナノ薄膜のDLCコーティングを適用した事例を紹介する.DLCコートの水素含有量によって,水と接する環境下における,DLC表面の水酸基の形成されやすさが異なり,それが水垢除去性に影響することを明らかにした.
岡嶋 芳史・鳥越 泰治
ガスタービンの高温化に大きく寄与している遮熱コーティングは溶射プロセスで施工されるため、多くの界面が存在する。このTBCの界面組織定量化技術を概観し、当社における界面制御に対する取り組みを紹介する。
高田 潤・田村 勝徳・中西 真
鉄酸化細菌由来の酸化鉄を空気中にて500~1000℃で加熱して得られるAlを含有した鞘状酸化鉄の赤色顔料について、作製方法(二段階作製)および色調特性について紹介した。この微生物由来の酸化鉄は直径約0.8μmの中空鞘形状を呈する。赤色の色調はAl量と加熱温度に依存する。特に、800℃での加熱材が最も鮮やかな赤色を示す。
林 朋治・濱崎 喜仁
林 朋治・濱崎 喜仁
林 克郎・赤松 寛文・大野 真之
瀬川 浩代