宮山 勝
従来,蛍光体は照明,テレビなどのディスプレイ,医療診断機器,センサー,標識などに用いられていますが,近年,蛍光体は新規物質の提案やナノ粒子化をはじめとする合成技術の発展によって,エネルギー,医療,セキュリティ分野など社会状況を反映したシチュエーションで活用されています.このように,多様でダイナミックに変化する社会状況のニーズに応えるべく,本特集では蛍光体の材料設計および開発状況について注目しました.本特集は前編と後編に分け11月号では,蛍光体の材料設計と新物質開発を中心に紹介し,12月号では,蛍光体の合成法,評価,複合化,応用について紹介します. (特集担当委員:冨田恒之,和田憲幸,井上幸司)
戸田 健司・岩城 将人・田中 諒
蛍光体の用途は白色LEDに留まらず、太陽電池用波長変換材料や植物育成にも展開してきている。本稿では、青色光励起による赤や黄色発光を得るために必要な蛍光体の設計指針について解説すると共に、その設計指針を用いて開発された蛍光体材料について述べる。
磯 由樹・磯部 徹彦
ハロゲン化セシウム鉛のペロブスカイトナノ結晶とカーボンドットが,II-VI族,III-V族およびI-III-VI族量子ドットに代わるナノ蛍光体として新たに台頭し,急速に研究が進展し,その特性が著しく進化している.本稿では,その研究開発の動向を報告するとともに,筆者らの最新の研究成果を紹介する.
植田 和茂
一部のペロブスカイト型酸化物では希土類イオンをAまたはBサイトに選択添加でき、サイト別の発光を明瞭に観察できる。ここでは、希土類イオンの一つであるTb3+イオンのサイト別添加とその発光、およびCe3+–Tb3+の共添加によるサイト間のエネルギー移動について解説する。
松嶋 雄太
バナジン酸塩化合物蛍光体は構成成分自体が発光する自己活性型の蛍光体である。その発光色は結晶構造と密接に関わり、青から黄色まで大きく色を変化させる。本稿では、この蛍光体の特徴を紹介するとともに、発光色に影響を与える因子を解説する。
佐藤 泰史・垣花 眞人
結晶サイト工学に基づく蛍光体物質探索法は,酸化物をベースにした白色LED用蛍光体の開発において有用である。本稿では、結晶サイト工学に基づく蛍光体物質の探索について,これまでの筆者らの取り組みを中心に解説する。
且井 宏和・原田 勝可・堀田 幹則
BCNO蛍光体はホウ素、炭素、窒素および酸素で構成され、蛍光波長制御が可能な無機蛍光材料である。本報では、化学気相析出法によるBCN成膜とレーザー熱処理によるBCNO蛍光体薄膜の作製プロセス、その構造や蛍光特性について概説する。
阿曽 悟郎・山嵜 正明・沢登 成人
白色LEDに用いられる赤色蛍光体に関して、材料設計はEu2+, Ce3+の5d準位を下げるため、窒化物、酸窒化物を中心に行われていた。我々のグループでは、これまで青色発光のみを示すと考えられていた、Eu2+フルオロアパタイト結晶にて、発光中心の占有サイトの制御を行い、可視光励起による赤色蛍光が発現することを見出した。
田村紗也佳・冨田 恒之
励起光よりも高いエネルギーの光を放出するアップコンバージョン蛍光体は、発光効率が低いことが実用化への妨げとなっている。効率向上のためには母体材料の選定が重要である。本稿では、結晶構造に注目したアップコンバージョン蛍光体の材料設計について報告する。
和田 憲幸・小島 一男・井上 幸司
紫外LEDチップを用いた赤色蛍光体波長変換LEDに,赤色蛍光を示すMn2+含有リン酸塩ガラスを適応するために,紫外光を吸収し,Mn2+にエネルギーを渡す賦活助剤となるイオンや欠陥を紹介する.
曽我 公平
3価の希土類イオンの熱緩和は、イオン性結晶における多フォノン緩和として1960年代より理解されており、その議論は主に数値化可能なフォノンエネルギーを軸としてきた。本稿では著者らが近年発見した有機溶媒に可溶なRE(BF4)n蛍光体を軸として熱緩和の新たな考え方と蛍光材料設計について議論する。
白石 敦則
新しく開発した「メタリック」調の質感を持つ新規光彩上絵の特徴や用途等の説明
本荘 博章
上絵ノ具の作り方 陶磁器用上絵ノ具はいかにして作られるのか?
水野 貴夫
下絵具の特徴や種類、特徴、製造方法についての解説