細野 秀雄
コロナ禍により我々の生活は一変しました.コロナウイルスとの共存やポストコロナ社会を見据えた取り組みがグローバルに展開されています.当然,「セラミックス」も例外ではありません.セラミックスをベースにしたウイルスや病原菌を退治できる材料の開発やウイルス検出など係わる分析技術の確立が進められています.また,ポストコロナの科学技術の行き先および社会科学へ連接する部分も非常に気になるところです.本特集では,all編集委員で,「セラミックスがポストコロナ社会にどのような貢献ができるのか」という観点で,社会科学にも触れながら,特集記事を展開いたします.ポストコロナ社会がセラミックスの貢献により明るい未来につながることを切望いたします. (特集担当委員:協会誌編集委員会)
[巻頭言・総説]
藤嶋 昭
酸化チタン光触媒の研究開始から現状までを紹介している。
特に強い酸化力と超親水性効果を用いた応用が広がっている現状、特に最近はウィルスへの効果もあり、注目されている技術。
有岡 雅行
協会の諸活動も、ポストコロナ、ウィズコロナ社会としてのニューノーマルに適応していく必要がある。昨年の秋季シンポジウムや表彰式での経験を踏まえ、今後の協会活動の目指す方向について紹介する。
井奥 洪二
新型コロナウイルス感染症は、人々の肉体のみならず人と人との繋がりにも大きな打撃を与えている。ウイズコロナからポストコロナへ社会が移行するためには、科学と非科学との連接や文と理の連接が重要な鍵となるであろう。
[ウィズコロナおよびポストコロナに向けた新素材・新材料]
山田 陽一・上田 剛慈・明渡 純
ウイルスに関する一般論とともに抗ウイルス性表面についての知見を整理し、筆者らが取り組む即効性と長期機能性を併せ持つ界面活性剤担持コーティングについて最近の成果を紹介する。評価試験方法についても述べる。
酒井 宗寿・中島 章
表面改質による超撥水性は、ウイルスや細菌を直接不活化させる機能ではないが、飛沫やウイルスの付着を抑制することが期待され、抗ウイルス・抗菌材料と組み合わせることで新しい概念を構築できる可能性がある。本稿では、超撥水性と抗ウイルス・抗菌性を組み合わせた「環境衛生材料」の試みについて、近年の状況を紹介していきたい。
本田みちよ・相澤 守
金属イオンは,病原微生物のタンパク質に作用し,複数の経路を介し,代謝機能を阻害したり,不活化させたりする.金属イオンを活用した材料は薬剤耐性を生み出しにくいことからも非医薬品系の耐感染性材料として有用であると考えられる.
横野 照尚
LED光源や蛍光灯などの室内光により高い抗菌性、抗ウイルス性能を発揮する室内光対応型光触媒材料の開発ならびにその塗料の商品化につて紹介する。また、塗料化した場合の製品自体の抗菌性、抗ウイルス性能評価結果や、フィールド試験を実施した際の長期にわたる抗菌性能評価結果についても紹介する。
加藤 且也・北村 昌大・永田夫久江・李 誠鎬・奥田 徹哉・平野 篤・笠原真二郎
血清中の抗体を簡便に分離・精製するために開発された多孔質ジルコニア粒子について,抗体分子との選択的な吸着を目的とした粒子の表面修飾法,抗体活性を低下させない回収法およびその吸着メカニズムを報告する。
[ウィズコロナおよびポストコロナに向けたウイルスや細菌などの検出・評価技術]
安浦 雅人・藤巻 真
PCRに匹敵する感度のイムノアッセイ実現に向け、様々な研究開発が行われてきた.なかでも磁性粒子の表面に抗体を修飾して用いる手法が近年注目されており,PCR法に迫る高感度手法も登場してきている.本稿では,その中から筆者らが研究開発してきた外力支援型アッセイについて紹介する.
秀島 翔
感染症の早期発見がパンデミックの影響を最小限に抑えることに繋がる。本稿では、糖鎖を固定化した半導体バイオセンサによるインフルエンザウイルスの高感度識別に向けた研究について紹介する。
篠田健太郎・齋藤 宏輝・柿澤 茂行・明渡 純
新型コロナウイルス感染症とセラミックスプレーコーティングは,一見,異なる対象に思えるが,ウイルスの伝搬過程とコーティングプロセスにおける物理的な挙動を考えると意外にも類似の現象を扱っているため,その伝搬過程をコーティングプロセスの観点から紹介したい.
[ウィズコロナおよびポストコロナに向けた産業界の取り組み]
澤田 健行・戸部真太郎
コロナ禍が続き、長くなる「おうち時間」を快適に過ごすためにも、ダニの糞・死骸や花粉に含まれる環境アレルゲンには気を使いたいところである。我々は環境アレルゲンの低減機能を有するセラミックス系建材を開発し2017年に上市させた。本稿ではその技術的な紹介を行う。
滝川 満
スマートフォンの登場以来、ディスプレイを触る事に何の違和感もなかった我々の常識が、コロナ禍以降、特に公共にあるディスプレイを触れる事に躊躇してしまうように変わってしまった。
タッチパネルを介してディスプレイに触れることなく、ジェスチャー等により操作する技術は従来からあったが、感染予防として、一気に注目を浴びるようになった。色々な方式が提案されているが、空中による操作に対してのフィードバックがないために、ユーザーが使いにくいという課題があった。
今回、我々は圧電セラミックスによる空中超音波触覚機能を追加した、ジェスチャー操作機能付きタッチパネルを開発した。背景及び、その詳細について以下説明する。
村井 信幸
可視光応答型銅担持光触媒(CuxO/TiO2)はSARS-CoV-2への不活化効果が確認され、大きな注目とともに改めて様々な製品展開に向けての動きが高まっている。本稿では建築内装分野への活用事例と予測される課題への対策などを紹介する。
中室 友良・間嶌 亮太
Withコロナ・ポストコロナにおいて,紫外線殺菌技術は必要不可欠な技術になると考えられる.我々は,LEDやエキシマランプのようなUV-C光源と組み合わせて使用できる紫外線発光デバイス用ガラスとして,シール材付リッドと深紫外バンドパスフィルタを開発した。これらの製品の特長を紹介する.
[社会科学との接点に関して]
井深 陽子
医療経済学をご専門とする井深陽子先生(慶應義塾大学教授・新型インフルエンザ等対策有識者会議基本的対処方針等諮問委員会委員)に我が国におけるコロナ対策とウィズコロナ・ポストコロナについてインタビューを行いました。
[教育]
亀島 欣一
まだまだ予断を許さないコロナ禍の状況であり,教育現場の混乱等は収束できていない.個々の状況によりコロナの影響は様々であるが,筆者の見聞きした主に大学での教育におけるコロナへの対応を中心に紹介する.