麻生 泰一
2021年5月18日の国連総会にて,2022年を国際ガラス年とすることが定められました.ガラスは,私たちの日々の生活に欠かすことのできない材料であるとともに,その様々な特徴的な性質から,持続可能な開発のための国連2030アジェンダを達成するためにも重要な役割を果たす材料です.さらにガラスは,その美しさゆえに多くの芸術家の想像を具現化してきた材料でもあります.このようなガラスの歴史を称え,その魅力をセラミックスに携わる多くの方々に伝えるために,本特集を企画しました. (特集担当委員:加藤毅之・赤松寛文・小幡亜希子・和田憲幸/特集協力:国際ガラス年日本実行委員会)
田部勢津久
国際ガラス年2022がいよいよ始まった.昨年5月の国連総会での正式採択までに至る,国際ガラス委員会を中心とした努力と歩み,今年1月開催の国内開会式の模様,2月ジュネーブ国際開会式の詳細,日本主催により東京開催が決定されている12月の国際閉会式はじめ予定されているイベント・活動計画の一端を紹介する.
山崎 博樹
人々が歴史的にさまざまなガラスを開発し、その機能をどのように生かすことで生活を豊かに、また数々の発明を可能にしてきたかを述べ、さらにガラスが持続可能な開発目標達成に貢献する事例や可能性について述べる。
大槻 主税・横井 太史・川下 将一
本稿では,医療に貢献するガラスの中でも,骨結合性を示すガラスを端緒として研究・開発が進められた骨修復用ガラスや骨修復用結晶化ガラス,ならびにがん治療用ガラスについて述べる.
大幸 裕介・作田 敦・本間 剛・林 晃敏
主にリチウムイオン,ナトリウムイオンおよびプロトン伝導性ガラスを取り上げて,ガラスに特有の「成形性」を活かした電極/電解質(ガラス)の接合法や,先鋭化したガラス電解質からのイオン放出に関する結果などを紹介する.
藤沢 章
断熱ガラス、遮熱ガラスとして、省エネに貢献するガラス、太陽電池用として創エネに貢献するガラス、また省エネと創エネの両方の機能をもったBIPVの窓ガラス、さらに光をコントロールし省エネに貢献する調光ガラスを説明する。
辻 良太
4000年の歴史を持つガラスびんは、常に人々に寄り添い今も生活を支えています。ガラスびんがこれまで社会にどのように貢献してきたか、そしてこれからも持続可能な社会実現にどう貢献していくかを述べていきます。
坂井 彰
放射性廃棄物を安定化する方式として、ホウケイ酸塩ガラスによる固化技術が各国で開発され実用化されている。将来に向けた改良や適用範囲の拡大のためには、ガラス組成の開発と溶融・固化プロセスの改良など、更なる最適化を継続的に進める必要がある。
徳永 博文
ディスプレイ分野においては大型化,高精細化,色域表示の拡大など様々な進歩が見られている.本稿では近年のディスプレイ基板用ガラスに求められる商品特性とAGCにおける基板開発の経緯について概説する.
榎本 正
石英系光ファイバは、シリカガラスの諸特性を最大限に活用して大成したガラス製品の代表的な社会貢献例の一つと言える。本報では、石英系光ファイバの誕生とその進化を振り返るとともに、その未来の展望についても概観する。
大谷 昌功
ガラス繊維製品やそれを強化材として用いた複合材料が、環境負荷を抑制、省資源化を推進し、結果として地球環境の保全に繋がり、SDGsの目標実現に向け貢献・寄与している内容を幾つかの例を挙げながら概説する。
武田 厚
戦後日本のガラス芸術は、岩田や各務により基盤が確立され、ガラス工芸協会やガラス工芸学会による組織活動へと発展した。ガラスの教育機関による作家の育成や美術館でのグラスアートの展開に寄せる期待は大きい。
小野寺陽平
最も代表的なガラスであるシリカガラスについて,量子ビーム実験と計算機シミュレーション,トポロジカル解析の連携によって行った研究成果を紹介し,ガラス構造に対するデータ駆動型アプローチの持つ可能性を議論する.
井上 朝雄
19世紀に登場した温室は、たった1枚のガラスで内と外とを隔てていた。これが今日世界中に広まっているガラス建築の原型であり、人のための建築として成立させる数々の技術開発の概略を紹介した。
高松 敦
自動車用の窓ガラスは世の中の要求とともに,少しずつ進歩している.本報ではSDGsの開発目標を切り口として,自動車用窓ガラスの機能を紹介する.また一般的な自動車用ガラスの種類,製造方法,求められる仕様も併せて説明する.
福島 英子
佐々木一成
井上紗綾子
伊藤 賢次
藤井 進・吉矢 真人