今月のオープンアクセス記事
今中 佳彦
我が国のセラミックス電子材料は,世界的に高いシェアを有する製品が多数存在し,高い技術開発力に支えられた競争力を有している.特に,自動車や電子部品等のエレクトロニクス系の部材や装置への貢献は著しい.しかし,近年の社会変化に対応するには,マテリアルの更なる高性能化とその多様化・複雑化を避けることができない.これらの需要を満たすために,製造プロセスを高度化する装置(設備)開発が脚光を浴びている.
本特集では,セラミックス電子材料革新を生み出す最新の装置開発に焦点をあてる.最新技術を取り入れた評価装置の開発や製造プロセスへの実装装置,大型放射光施設を用いたオペランド計測技術開発について紹介する. (特集担当委員:相見晃久,白石貴久,古賀英一,波多野桂一,大澤健男,北中佑樹)
田中 博直
炉メーカーを取り巻く環境は年々変化してきている.また焼成炉においても製品の小型化・高性能化に伴い,焼成炉にもより高度な制御が求められており,その中で我々炉メーカーの取り組みの一例を紹介する.
井上 義之
様々な製品を作るために,多くの粉体材料が用いられている.本文では超微粒子を作るための乾式粉砕技術,微粒子を合成法等によって作成されたナノ粒子と機械的エネルギーによって一体化して様々な機能を発揮させる複合化,セラミックス超微粒子の製品管理に必須となる湿式ふるい分けから属人化要素を取り去ったふるい分け装置について紹介する.
牧野 由
電子部品製造工程において弊社が培ってきた「圧着」「積層」「剥離」の技術と関連する製造装置についてアプリケーション事例を交えながら解説する.また,各技術の開発方向性やUVによる表面改質技術といった新しい取組みも紹介する.
小山 大輔
セラミック製品は用途により成形するシートの厚さが異なり,弊社では,超薄膜から薄膜,薄膜から中厚膜,中厚膜から厚膜で塗工方式を使い分けて,設計製造しており,その中でも近年,最も需要の多いMLCC用途でのR2コーター方式の特長に焦点を当てる.
吉田 将之・小西 優子
2050年のカーボンニュートラル達成には,機能性材料の開発と,その材料の細孔の連結性や緻密性の把握,BET比表面積,細孔分布評価は不可欠である.本稿では,これら評価において必須な吸着等温線測定の“これまで”と“これから”を正確性だけでなく,安全性ならびに迅速性の観点で紹介し,一例として全固体電池用の電解質を用いた,大気非暴露下での特殊試料管での吸着等温線測定とその解析法を解説した.
上村祐一郎
近年,質の高い粉末XRDプロファイルが求められてきている.本文では,粉末XRD測定にエネルギー分解能の高い最適な光学系,検出器の選択を行うことで,高いS/N比データが取得可能であることを測定例とともに述べる.
川畑 正伸
シリコンナイトライドウィンドウEDSは,ポリマーウィンドウEDSと比較して,低エネルギー側が高感度でX線計数率が30%向上した.また高耐熱のため加熱分析が可能.さらにCMOS増幅回路の採用で高速測定でもピーク分解能が細い特長を有する.
坂倉 輝俊・岸本 俊二・木村 宏之
単結晶X線結晶構造解析法の数学的背景から,電子密度分布計測の理論限界を議論することが出来る.APD検出器と多重回折の回避,および高輝度放射光X線を組み合わせた計測システムは,その理論限界に迫る装置となる.
塚田 真也・宮崎 英敏
強誘電体の材料開発において,少量の試料から非破壊・非接触で誘電性や強誘電性相転移温度を評価することができるラマン分光法について,我々の二チタン酸バリウムBaTi2O5の研究結果を用いて解説する.
吹留 博一
筆者は,デバイス動作条件下における電子状態を高時空間分解能で観測する時空間オペランドX線分光法を開発した.本法は,従来詳らかにできなかった,動作下での物性の時空間変調の解明を可能にするものである.
村松 佳祐
稲田 幹
川村 知栄
宋 海刚・赵 萍・王 曦鸣・横井 正纪