赤澤 敏之
エネファーム(SOFC)の販売開始から10年が経過し,さらにカーボンニュートラルの加速化に伴い,SOFCに求められる性能は変化している.本特集ではSOFCの高性能化に向けたセル開発およびセル信頼性を保証するための計測技術を紹介する.
まず,「SOFCの現状,課題,および今後の取り組み」について,つぎに,最新の知見を含めた研究を紹介する. (特集担当委員:藤田 悟・幾原裕美)
川田 達也
本稿では,SOFCの開発の歴史を振り返り,現状を俯瞰して,本格普及に向けた課題とそれに対する各種の取り組みについて紹介する.さらに今後のカーボンニュートラル時代でのSOFCの貢献について展望する.
バガリナオ カテリン・石山 智大・岸本 治夫
SOFC用空気極の高性能化に向けて,異種材料界面をナノレベルで大量に導入した自己組織化ナノ複合電極を開発した.本稿ではパルスレーザー堆積(PLD)法で作製した本電極の特徴と,燃料極支持型セルへ搭載した際の性能を紹介する.
谷口 俊輔
FeCrAl合金の表面アルミナ皮膜に導電性を発現させる表面処理とナノ柱状構造の発見に基づき,この合金を支持体に用いたメタルサポートSOFCの開発を行っている.セル作製法と構造のコンセプト,要素技術開発の状況を紹介する.
鷲見 裕史
液化石油ガス(LPG)の主成分であるn-ブタンの内部改質が可能なポータブル固体酸化物形燃料電池(SOFC)システムを開発し,実際に小型無人航空機(ドローン)に搭載して実証を行った.
八代 圭司
宇宙機の電源の冗長化のために,これまでの太陽光発電・蓄電池の組み合わせに加え,液体推進剤を利用した固体酸化物形燃料電池による発電源の組合せをについて検討した事例について報告する.
石原 達己
再生可能エネルギーを水素へと変換し,水素で蓄積,平準化することが期待されており,高効率電解技術として水蒸気電解装置の開発が期待されている.本稿ではLaGaO3膜を用いる小型円筒型セルの燃料電池および水蒸気電解装置としての性能を紹介する.
内田 裕之
再生可能電力を用いて水蒸気を高効率電解して水素ガスを製造する固体酸化物電解セルと,貯蔵した水素で高効率発電する固体酸化物形燃料電池としても機能する可逆作動デバイスの高性能・高耐久電極の研究開発成果について述べる.
鹿園 直毅
Niパターン電極の実運転下における移動現象をオペランド観察した.Ni移動現象は非常に動的なプロセスであること,実運転条件によってNiの濡れ性が大きく変化すること,電解質基板によってもNi移動が大きく影響を受けることが明らかになった.
井口 史匡
SOFCの耐久性・信頼性を担保するためにその構成材料の作動下における機械的特性を評価することは重要である.本稿ではその意義,作動下とするために必要な条件,手法等について紹介する.
佐藤 一永・橋田 俊之
SOFC性能に直結するヘテロ界面に存在するはく離欠陥を迅速かつ正確に可視化する方法が求められている.本研究では,テラヘルツ波と機械学習を併用したはく離損傷の可視化に関する最近の研究成果を報告する.
藤田 悟・西村 友作・奥田 匠昭・加藤 晃彦・山口 聡・野崎 洋・野中 敬正・小林 哲郎・堂前 和彦
量子ビームである放射光(SPring-8内の豊田ビームライン(BL33XU))を用い,1. オペランド※蛍光Ni X線吸収微細構造解析法(XAFS)によるNi価数評価,2. In-situ透過Ni XAFSによるNi酸化抑制評価,3. マイクロビームX線回折(μXRD)によるYSZの信頼性評価について紹介する.
長野 将典
Patcharaporn PIMCHAN
上髙原理暢・梅津 将喜
相見 晃久