田近 正彦
セラミックス産業を支える「企業」に焦点をあてた本誌初となる企画です.この特集企画の主たる狙いは,企業が開発・保有しているセラミックスに関わる「科学・技術」を具体的な製品を例示しながらご説明いただくことで,これらの企業がセラミックス産業,さらにはセラミックスを用いた製品を使用している他産業や一般消費者の生活を支えていることを会員の方々に広く紹介することにあります.それらに加えて,持続可能社会の実現に向けて,企業におけるSDGsやカーボンニュートラルに係わる取り組みや今後の方向性,さらには大学等でセラミックスに関わる学生に対して企業の研究開発の魅力を伝えるメッセージをご執筆いただいた記事もあります.読者の皆様にセラミックス産業を支えている企業の素敵な魅力が伝われば幸いです. (特集担当委員:相澤 守・加藤毅之・佐藤泰史・和田琢真)
後藤 潔
黒崎播磨株式会社は,予熱や乾燥が不要な耐火物の提供,高性能断熱材などを例とする製品とサービスで高温産業や各種機器の進歩とカーボンニュートラル活動に貢献している.これらを裏打ちするのは材料技術,シミュレーション技術などであり,また製造工程での省CO2化である.鉄鋼をはじめとする産業界の大転換を支える耐火物の歴史的転換に,新鮮な力を貸して頂きたい.
清原 正勝
TOTOは,衛生陶器で培ってきた技術を半導体製造装置用大型部材の製造にまで発展させ,弊社の1つの事業として成長した.
今回は,その事業部を支える一商品として,エアロゾルデポジション(AD)法を利用した「耐プラズマ部材」製品について紹介する.
水野高太郎
太陽誘電のセラミックス技術の代表例である積層セラミックコンデンサの材料技術を紹介する.その材料技術を生み出す研究開発体制や,材料技術の活用により持続可能な社会の実現にも貢献する事例なども合わせて紹介する.
大和田 巌・小林 伸行
日本ガイシの,設立から100年以上生み出し続けてきたセラミック製品の歴史と,2050年の未来に向けた新製品開発の取り組みを紹介し,その中の具体例として,チップ型セラミックス二次電池の技術概要,将来展望を述べる.
濱崎 喜仁
陶磁器を着色するために顔料やケイ酸ジルコニウムが多く使用されており,その歴史は長い.顔料の製造技術やケイ酸ジルコニウムによる白濁の要因などについて述べる.
大神 剛章・増田 賢太
弊社は,気候変動問題への対応,脱炭素社会の実現に向けた取り組みを重要な経営課題であると位置づけ,カーボンニュートラルを実現するための研究開発に取り組んでいる,本稿では,自社の保有技術を活かした材料開発の例として,リチウムイオン電池用正極材料と機能性中空粒子を紹介する.
徳地 成紀・白仁田 亮・寺村 享祐
In-Ga-Zn-Oに代表される高移動度な酸化物半導体は,高精細ディスプレイ等に適している.しかし,有機ELやAR/VRディスプレイにはさらに高移動度な材料が好まれる.本稿では,標準的なIn-Ga-Zn-Oより高移動度な酸化物半導体材料に関して紹介する.
高谷 辰弥
ガラス事業では,特に溶融工程におけるエネルギー消費が多いため,当社では溶融工程への省エネルギーやCO2排出削減の取り組みを進めてきた.本稿では,2050年カーボンニュートラル達成に向けた当社のガラス溶融炉に関する取り組みを紹介する.
小森田 裕
弊社の窒化ケイ素は,1974年にイットリアなど希土類酸化物系組成が発明され,その後パワー半導体用の基板やハイブリッドベアリング用のセラミックボールに使われ,ハイブリッド車や電気自動車用途など広がりを見せている.
伊藤 雅章
赤色は陶磁器においても古くから用いられているが,一般的にセレンとカドミウム,鉛を含む絵具が使用されてきた.本稿では,それら有害物質を全く含まない新しい鮮やかな赤色絵具の開発と発色メカニズムについて概説する.
塙 優
建築用や自動車用の板ガラスについて,最終製品になった後のものは,現状ほとんどが水平リサイクルされていない.なぜ水平リサイクルが進んでいないのか,技術的,経済的観点を中心に整理し,今後加速していくためにはどうするべきかを考察する.
谷口 佳孝・江本 秀幸
デンカ株式会社では,カーバイド系製品の開発・製造で培った高温反応制御,窒化技術を活かして,ファインセラミックスの分野に新たな製品を展開してきた.今回は窒化ケイ素を中心とする技術・製品を紹介する.
川合 秀治
株式会社LIXILは,トイレ,キッチン,水栓,タイル,サッシなどを総合的に製造販売しグローバルに展開している.トイレやタイルのセラミックスは,エネルギーを使わず機能を発揮する進化を遂げており,その機能性セラミックス建材について紹介する.
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