田中 功
近年,環境保全意識の高まりから,さまざまな工業プロセスで化石燃料を使用しない製造工程の検討がなされている.陶磁器製造工程に目を向けると,粘土成形体の焼成工程や絵付け等の装飾工程において,重油やブタンガスが燃料に使用される現状にある.陶磁器産業を持続可能なものとする上で,二酸化炭素等の温室効果ガスの極力発生しない加熱技術の開発は大変重要であるため,現在の研究開発動向について掲載する.また後半は,セメント産業における取り組みを紹介する. (特集担当委員:立木翔治・濱崎喜仁・前浪洋輝)
高橋 良治・加藤 健次
本報では,わが国の工業炉の概要,工業炉関連の温暖化対策の進捗及び工業炉の省エネ技術を紹介するとともに,将来のカーボンニュートラルへの移行について,工業炉業界を取り巻く周辺環境と課題を述べる.
新島 聖治・谷口 弘明・橋本 典嗣・西村 正彦
陶磁器の製造では,数回の焼成工程で多くのエネルギーを必要とし,多量のCO2を排出している.本稿では,焼成工程のCO2排出量を削減する技術の概要と実証試験の結果ならびに実用化に向けての取り組みについて紹介する.
大倉 莉奈・田口 脩平
国内の工業炉から排出されるCO2は国内総排出量の約17%を占めており,2050年のカーボンニュートラル実現に向けて工業炉分野での脱炭素化は必須となる.工業炉分野での脱炭素化は省エネの強化に加えて,脱炭素エネルギーである水素の導入拡大で進んでいくと予想される.本稿では,当社が世界初の工業用汎用水素バーナを開発した経緯および,この汎用水素バーナを応用した水素燃焼技術について紹介する.
萩原 義之
2050年に向けたカーボンニュートラルの流れは一層加速している.ガラス溶解炉におけるCO2削減を目的として,酸素燃焼技術の利用方法を紹介する.化石燃料に対する酸素富化,酸素燃焼技術の導入に加え,今後利用の拡大が期待される水素/アンモニア燃焼利用の可能性と,その技術課題について解説する
伊藤 貴康・新 大軌
セメント製造では,エネルギー由来に加え,主原料の石灰石の脱炭酸に起因するプロセス由来のCO2も多量に排出している.セメント業界は2050年のカーボンニュートラルに向けての長期ビジョンを示し,CO2排出量削減のための研究開発に取り組んでいるところである.本稿では,脱炭素社会に向けたセメント系材料の研究・開発動向として,低温焼成技術,熱エネルギーの低炭素化技術,クリンカ比率の低減および新規低炭素型結合材の開発状況を取り纏めた.
木村 貴之・下田 翔
本誌では,セメント製造においてカーボンニュートラルに向けて取り組まれている低炭素化を指向した焼成やその付随設備,およびCO2回収・利用に関する技術を中心に解説する.
大野 晃
多様なカルシウム源から抽出したカルシウムと,セメント製造プロセスから排出される二酸化炭素と反応させて人工石灰石とする炭酸塩化技術と,得られた人工石灰石を用いてセメントを製造しコンクリートとして利用するための利用技術の開発状況について概説する.
若井 史博
塩濱 満晴
大庭 康宏
小形 昌徳
中西 和樹・長谷川丈二
中村 真紀