大西 宏司
IoTや高速通信が進展するなか,半導体や電子部品への需要が高まっている.その主要部品を担うセラミックス素子の高性能化には,原料粉末からの製造プロセスを高度化することが必要である.本特集では,微細化や高機能化が進むセラミックス原料粉体の最前線を紹介する.源泉工程(粉体,スラリー)の基礎的な評価方法や技術,さらには品質管理について,最新動向含めて紹介する. (特集担当委員:相見晃久・古賀英一・白石貴久・波多野桂一・大澤健男・寺西貴志)
国枝 武久
近年の電子機器の小型化,高機能化に伴い,受動部品である積層セラミックコンデンサ(MLCC)においても,小型化,高容量化,高耐圧化など,その特性向上に対する要求は非常に高まっている.最先端MLCCの誘電体層が0.5μmにまで薄層化されている中,当社がこれまでに行ってきた蓚酸塩法による微粒高結晶チタン酸バリウムの開発について簡単に紹介したい.
日向 進・上柳登紀夫・藤田 隆之
アルミナセラミックスの特性はその微構造により決定されるが,遡ると原料粉体の特性に大きく依存している.本稿ではアルミニウムアンモニウム炭酸塩熱分解法による高純度アルミナ粉体の特⻑と,その粉体から得られる焼結体の特性について記述する.
高井 優行
1200~1250℃の低温で常圧焼結が可能な粉末を開発し,その技術を応用して優れた靭性・強度・低温劣化耐性を具備するジルコニアセラミックスを開発した.この低温焼結粉末の技術,およびそこから得られるセラミックスの特性について紹介する.
大屋 紀之
粉体のキャラクタリゼーションは,粒子界面の状態に影響されることも有り,粒子界面を直接数値化できる手法が望まれる.パルスNMR(TD-NMR)は,緩和時間を測定することにより粒子界面を評価する手法である.
平津 豊
酸化マグネシウム粉体の製法や用途を説明し,これまで産業界に役立ってきた歴史を解説する.また,酸化マグネシウムの用途は既に出尽くしたと思われているが,今もなお新しい用途開拓が行われている現状を紹介する.
竹田 昌平・西田 悠光・齋藤 正紀・小出 剛士
セラミック粉末を含んだインクを用いた産業用インクジェット印刷において,求められるセラミック粉末およびインクの特性に関する基礎的な評価方法や,インクジェット印刷による膜形成の技術,形成した機能性セラミック膜の評価結果について報告する.
荻原 隆
エレクトロセラミック向け電極材料としての金属粉末について,湿式還元法およびアトマイズ法で製造される高品質金属粉末の粒子特性,ペースト特性について紹介する.
鳥越 秀平
電子部品用セラミック粉体材料における物性指標として粒子径を取り上げ,一般的な粒子径測定手法についてレビューするとともに,近年発展が著しい画像解析を利用する測定技術の優位性について紹介する.
平野 美穂・恩田 真吾・金治晋太郎
情報通信機器の小型化,高性能化に伴い,電子材料等の微細化が積極的に進められている.代表的な電子粉体材料の一つである微粒子チタン酸バリウムの粒子径分布測定事例をもとに,材料粒子径の最適な評価方法について提案する.
森 裕貴
フュームドシリカは流動性の改善の他に多くの機能を持つため,幅広い用途で使用されている.本稿ではフュームドシリカの基本及び応用特性について紹介する.
渕上 輝顕・崔 弼圭・増田 佳丈・谷端 直人・中山 将伸・羽田 政明・柿本 健一
シングルナノオーダーの反応性と安定性やハンドリング性を兼備する粒子を実現するために,著者らが取組んできた架橋性配位子を活用したナノ階層構造体の合成について,その形成過程と構造に関連する機能性向上について解説する.
スベン アルブレヒト・ラルフ オッターシュテット・野瀬 勝弘
ニオブはエレクトロセラミックスのドーパント材料および鉛フリー圧電セラミックスの主要構成元素として用いられる.本稿ではニオブの応用例とタニオビスにおける開発を紹介する.
田近 正彦・梅本 奨大
炭酸カルシウムは,従来から充填剤(フィラー)として幅広い用途で使用されてきている材料であるが,粒子をより微細化することや高純度化することにより,これまでにない新たな用途への展開が期待されている.ここでは,その実例を紹介し炭酸カルシウムの可能性を述べる.
丸尾 容子