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難波 徳郎
高純度に精錬する製造プロセスを経た人工的な無機試薬を使用するようになって,ファインセラミックスの時代は幕開けました.日々の研究開発に私たちが用いている試薬は高度に管理された状態にありますが,元々は多くの不純物を含む粘土・鉱石として存在するものです.本企画では,国内外の過去から現在に至るまで稼働している鉱山の役割と,SDGsを道標として未来に向かって開発されている鉱山の紹介をします.そして,それらの流通から製造までのプロセスを経て,試薬が得られるまでの実際も紹介します.さらに,直面している資源の枯渇の問題に向けてのいくつかの取り組みも解説します.試薬がどのように我々の元に届けられているのかは,多忙さによってやや忘れがちになりやすいことですが,持続可能な社会を育むためには必要な知見であると考えて,今回特集を組みました.今回紹介できた源流からの流れが皆様の研究開発の一助となれば幸いです. (特集担当委員:波多野桂一・佐藤泰史・藤田 悟・町田慎悟・幾原裕美・相澤 守)
白川 博一
1691年から283年にわたり操業された別子銅山は,江戸期は日本の主要輸出品である銅の産出元として,そして明治期は広い産業の中心として我が国の近代化に貢献した.その歴史と,鉱山が産業発展に果たした役割を紹介する.
ニオブは高級鋼材・特殊鋼材を生産するために必要不可欠な原料であり,昨今では自動車,大規模建機,タービンなどの他,リチウムイオン電池への使用も注目されている.本特集では,ニオブ鉱山の紹介やニオブ鉱石からどのようにニオブ製品が精製されるかにスポットを当てて紹介する.
天然鉱石からジルコンサンドになるまでの製造プロセス,そして,ジルコンサンドの展望,および我が国におけるチタンのサプライチェーンの今後の見通しや,製品の一例となるチタン水溶液の今後の展望を述べたい.
加藤 泰浩
カーボンニュートラルを基軸とする持続可能な社会の構築には,多種多様なレアメタル,特に「レアアース(希土類)」と呼ばれる元素群が必要不可欠である.本稿では,このレアアース資源を巡る問題の現状について解説する.
加藤 泰浩
本稿では,我々が太平洋で発見した新資源「レアアース泥」について解説し,南鳥島周辺の排他的経済水域における超高濃度レアアース泥に関する様々な研究成果と,その資源戦略上の意義について紹介する.
伊藤真由美・パク イルファン
セラミックス材料,金属材料などの元をたどると鉱石に辿り着く.鉱山で採掘される鉱石は1. 選鉱(物理的な選別:粒子同士の選別),2. 製錬(化学的な精製)を経て純度の高い材料となる.本稿では1. 選鉱に焦点を当て,天然鉱山・都市鉱山からの有価粒子の選別手法を紹介する.
菅 大輔
東邦亜鉛株式会社は,1937年に日本亜鉛製錬株式会社として設立,安中製錬所を建設し,電気亜鉛の製錬を開始したのが起源である.本稿では,東邦亜鉛の亜鉛製錬の沿革について紹介するとともに,当社の亜鉛製錬プロセスについて説明する.
佐藤 英俊
リン鉱石からリン化合物ができるまでのプロセスを解説するとともに,フッ素化合物も製造される事に言及する.またリン及びフッ素資源が地政学上のリスクを抱えており,資源リサイクルが注目されている事にも触れる.
田近 正彦
石灰石は国内に豊富に存在し,セメントや製鉄分野で大量に使用されている.それに比べて,石灰石から得られる炭酸カルシウム粉体は量的には少ないが,工業材料分野をはじめ食品や医療,医薬,オーラルケアなどの幅広い分野で利用されている.
高木 哲一
国内の陶磁器(飲食器,衛生陶器,タイルなど),ガラス,ガイシなどの生産を支えてきた陶土・珪砂などの窯業原料が,今,枯渇の危機を迎えている.陶土・珪砂資源の特徴,資源の現状を解説し,資源確保への取り組みを紹介する.
山末 英嗣・光斎 翔貴・柏倉 俊介
越後 満秋
鈴木 一正
遠藤 大介