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新見 秀明
エネルギー効率を高める省エネ技術のなかで,特に7割近くが捨てられている廃熱を電気エネルギーとして有効利用する技術は,昨今の社会的課題を解決する上で極めて重要です.その点において,熱を電気に直接変換する熱電発電技術が再注目されており,さまざまな技術開発および新しい設計指針・原理が急速に進展しております.
本特集では,環境負荷の少ない熱エネルギー利用社会の実現に貢献する熱電変換材料・デバイス研究について,最新の研究成果を紹介していただきます. (特集担当委員:大澤健男・白石貴久・相見晃久・寺西貴志,編集協力:革新的熱利用・熱制御材料研究会)
大瀧 倫卓
酸化物系熱電変換材料は,約30年前に我が国で産声をあげた材料である.近年脚光を浴びている,同じ金属カルコゲナイドである硫化物系とも比較しながら,酸化物系熱電変換材料の新たな基軸を議論する.
森 孝雄
本稿では,最近,新規な熱電材料・デバイスの大幅な高性能化につながった,新規な高性能化原理に関し系統的に説明する.ゼーベック係数の磁性増強や,フォノン散乱の制御や,欠陥制御などに関して具体的な解説を行う.
安藤 冬希・内田 健一
モーターや発電機など身の回りで広く利用されている永久磁石を使って熱電冷却・発電ができれば,革新的な創エネ・省エネ技術に繋がると期待できる.本稿では,永久磁石でありながら高い横型熱電変換性能を兼ね備えた「熱電永久磁石」の開発について紹介する.
片瀬 貴義・神谷 利夫
酸化物熱電材料は無毒で豊富な元素で構成される利点があるものの,高い熱伝導率によって性能が制限されている.本稿では,酸化物の性能向上に向けた新アプローチとして,SrTiO3への“水素”添加による熱伝導率低減とそのメカニズムについて紹介する.
中村 芳明・寺田 吏
Si基板上にエピタキシャル成長したCa挿入シリセン薄膜において,シリセンのバックリング高さが増大した結果,バルク材料と比較して,高い電気伝導率と約2倍のゼーベック係数が得られ,高出力因子が観測された.
瀬下 亜里・山下 愛智・水口 佳一
多元素固溶による乱れを有する系や,相界面・相分離状態を有する系は,機能性材料開発の新たな舞台となっている.本稿では,ハイエントロピー型熱電材料開発と,完全相分離系超伝導体における不揮発磁気熱スイッチングの観測について紹介する.
菅原 徹・和泉慎太郎・佐藤 克成・吉國 聖乃・伊藤 雄一・伊庭野健造
Society 5.0(超スマート社会)の社会インフラとして注目される Cyber PhysicalSystem(CPS:サイバーフィジカルシステム)において,サイバー空間で,最適化されたデータが,フィジカル空間へ戻される際,情報端末からヒトへの情報伝達の「見逃し」が課題として注目されている.本稿では,スタートアップ企業と共同で,ヒトのアウェアネスを刺激するヒューマンマシンインタラクション技術として,温度を時空間に精密制御するヒトへの情報伝達ツールの研究・開発内容を掲載する.
菊川結希子・前野 吉秀・鈴木 祥浩
高井 優行
熊谷 光浩・田中 宏・山口 誠・佐藤 健太
新野真紀子・谷島 健二・長谷川裕晃・寺谷 彰悟
浮貝 沙織・鳩野 広典・目木 嘉・寺本 篤史
吉田 英弘・増田 紘士
イ・ギョンソ
北岡 康夫