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島ノ江憲剛
細野 秀雄
透明酸化物の電子機能の開拓研究に挑み,「目から鱗」の新物質である透明酸化物半導体,鉄系超伝導体や安定な電子化物などを発見し,社会実装に繋げる,新たな学術のフロンティアと応用について,レビューしていただきました.
セラミックスの基本原料である大きなバンドギャップを有する酸化物を使って,電子が主役となる新機能の発現を目指す筆者らの研究をその背景,視点と現在の到達点とともに概説する.
昨今の理論物理・化学の深化,計算機の目まぐるしい性能向上,さらには機械学習といったインフォマティクス技術の発展は,現在のセラミックス材料開発に大きく貢献している.計算科学は実験で得られた現象のメカニズム解析にとどまらず,計算科学による高精度・高確度な物性予測も可能であり,セラミックス材料の研究において今や不可欠なものとなりつつある.本特集では,セラミックス材料のマルチスケールな物性にアプローチした研究における最近の動向についてご紹介します. (特集担当委員:赤松寛文・古嶋亮一・望月泰英・横山智康)
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大場 史康
計算科学的アプローチによる無機材料の設計と特性予測に関して,本特集の主な対象である原子・電子レベルのシミュレーション手法を中心に理論的背景や適用例を概説する.
望月 泰英
本稿では,Mie-Grüneisenの状態方程式から,擬調和近似に基づいて固体の熱膨張係数を導出し,それを支配する因子を紹介する.非調和項を示唆するGrüneisen定数,体積弾性率などの固体の熱物性における化学的傾向,負熱膨張材料の機構解明を行った事例を簡略に紹介する.
吉田 傑
セラミックス分野でよく注目されるバンドギャップや有効質量以外にも,バンド構造は豊富な情報を含んでいる.本稿では,電子のブロッホ状態が持つ対称性に注目し,第一原理計算を併用しながら結晶構造歪みの起源について電子状態の観点から迫った研究を紹介したい.
設樂 一希・桑原 彰秀
プロトン伝導性Y添加BaZrO3を対象に,第一原理計算とグラフ理論を組み合わせて伝導経路の探索を行い,八面体の局所格子歪みに着目して特徴量解析を実施した.伝導度変化に支配的な構造パラメータを抽出し,伝導度のドーパント濃度依存性の起源を解明した.
嶋田 隆広・見波 将・笠井 恒汰
ナノ強誘電体では近年,磁性をともなうマルチフェロイクスや分極のトポロジカル秩序形成(スキルミオン)などの新奇特性が発見されている.本稿では,第一原理計算やPhase-Field解析を用いた強誘電体の新展開に関する最新研究を概観する.
高橋 亮
近年,多数の物質の物性を第一原理計算により評価して材料探索を行う計算材料スクリーニングが流行している.本稿では自動計算プログラムと機械学習を用いて人間の介在なしに所望の物質を優先して探索する手法・システムの解説を行う.
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中野 晃佑
本稿では筆者の専門である第一原理量子モンテカルロ法の現状,及び,将来の物質科学分野への応用展望について紹介する.
浦田 新吾・Federica Lodesani・Alfonso Pedone
ガラスの強度を高める方法として,微細な結晶を含むガラスセラミクスや,ナノ粒子を内容した複合材料が用いられる.本稿では,分子シミュレーションを用いた材料強度の解析と,メタダイナミクスを用いた結晶化シミュレーション技術について紹介する.
只野 央将
第一原理計算を用いて熱伝導率,電気伝導率,そしてゼーベック係数を計算する方法について,近年の理論的進展を中心に紹介する.また,その手法がどのように材料解析・設計に生かせるのか,逆ペロブスカイト物質を例に実演する.
オープンアクセス
新屋ひかり
従来の第一原理計算では困難であった,「有限温度における電気伝導特性」を予測可能とする新しい計算手法を開発し,強磁性半導体 (Ga, Mn)As における電気伝導特性が示す特異な温度依存性の謎を解明した研究を報告する.
伊田進太郎
森 祐紀
古嶋 亮一