今月のオープンアクセス記事
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鈴木 治
数ギガパスカル以上の超高圧を利用した新物質探索や物性研究が注目されている.酸化物や窒化物,複合アニオン化合物など,最近のセラミックス材料開発にも活用されている.本特集では,これに関する第一線の研究者にご寄稿いただき,最新の研究動向や今後の展開について紹介したい. (特集担当委員:松永克志・赤松寛文・酒井祐規・望月泰英)
稲熊 宜之
高圧合成は高密度相を得るというだけでなく物質探索において有効な方法である.本稿では,筆者らがこれまで取り組んできた高圧と固体フッ素源を用いたフッ化物および酸フッ化物の合成について紹介する.
勝又 哲裕・越智 優希
金属フッ化物と金属酸化物との反応性をHard Soft Acid Base(HSAB)則に基づいて検討し,キュービックマルチアンビル高温高圧発生装置を用いて新奇層状ペロフスカイト型酸フッ化物の合成に取り組んだ.
東 正樹・劉 丘民・西久保 匠
高圧合成で得られるペロブスカイト酸化物BiNiO3とPbCrO3の金属間電荷移動相転移と,化学置換による巨大負熱膨張物質,巨大熱膨張物質化を紹介する.
オープンアクセス
山本 文子
最近,筆者の研究室において高圧法により合成したペロブスカイト型のRbNbO3およびRbTaO3の逐次相転移の温度依存性について,従来のペロブスカイト型強誘電体と比較しながら紹介したい.
飯村 壮史
ベルト型高圧装置は数GPaの圧力と直径10mm弱の試料を得られる大きな試料スペースを持つため,機能性材料の探索に適している.本稿ではベルト型高圧装置を用いて高い水素分圧下で合成したヒドリドイオンドープ鉄系超伝導体やヒドリドイオン伝導体,さらに,高圧を印加することで安定化させた準安定な高密度相半導体について紹介する.
藤田 晃司
近年,高圧合成法は,機能性物質を開拓する一つの有用なツールとして物質科学の分野で積極的に活用されている.本稿では,10万気圧以上の超高圧を利用した機能性酸化物の合成について,筆者らの成果を紹介する.
山本 孟
超高圧合成法を用いることで,新たな結晶構造や化学組成を持った新規物質を創り出すことができる.私たちは最近,結晶構造内でカチオン間の共有結合を形成する物質について調べている.本稿では最近の研究について紹介したい.
今井 良宗・佐藤 楓貴・大串 研也
キタエフ模型の発見を契機として,遷移金属ハニカム磁性体の研究が盛んに行われている.本稿では,高圧合成法を用いて,新たに見出したハニカム化合物RuBr3,RuI3の電子物性や,それらの混晶系で観測されるバンド幅制御型の金属絶縁体転移について解説する.
オープンアクセス
竹下 直
キュービックアンビル型高圧力装置を用いて,水銀系銅酸化物高温超伝導体(Hg-1223)が圧力下で超伝導転移温度がどのように変わるかを実験した結果を参照し,物性測定実験における静水圧的な圧力発生の重要性について考える.
水口 佳一
ハイエントロピー合金は5元素以上が固溶した多元素固溶合金である.本稿では,ハイエントロピー合金型の金属テルライドの物質設計および高圧合成について説明し,本系が高圧下で示す特異な超伝導物性を紹介する.
清水 克哉
10年前に200Kを超える水素化物の伝導体が発見された.この超伝導は高圧力を必要とするが,室温超伝導の実現に向けて,圧力技術を使った新しい超伝導開発に注目が集まっている.
オープンアクセス
関根ちひろ
大型プレスを用いた高圧合成技術を紹介する.また,圧力誘起自己充填反応など超高圧下における特異な反応を利用したスクッテルダイト系熱電変換材料の合成と熱電特性について最新の研究成果について紹介する.
丹羽 健・佐々木拓也・長谷川 正
超高圧下において,多くの新規遷移金属窒化物が発見されている.本稿では3s遷移金属過窒化物を中心に,レーザー加熱式ダイアモンドアンビルセルや大容量プレスを使用した遷移金属窒化物の合成について紹介する.
西山 宣正
超高圧発生装置を活用した5~15万気圧での酸化物および窒化物の焼結多結晶体の合成とその評価を紹介する.具体例として,立方晶窒化ケイ素の透明多結晶体や,最も硬い酸化物であるスティショバイト・ナノ多結晶体などを紹介する.
柿本 健一
中川 ゆみ
末松 昂一・渡邉 賢・島ノ江憲剛
板垣 吉晃
木村 雅和
大江 耕介