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特集　固体イオン伝導体の最新研究動向と応用

セラミックスなどの固体中をイオンが電荷担体として自由に動き回ることができる固体イオン伝導体は，燃料電池，全固体電池，センサなど電気化学デバイスの固体電解質として使用されている．固体電解質はデバイスの高性能化や安全性の向上などに寄与するキーマテリアルであることから，長年に渡って研究開発が盛んな分野である．近年では，カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの中で，更なる高性能化を目指した研究が活発化し，新しい特徴ある材料が数多く見出されている．本特集では，酸化物イオン，プロトン，ヒドリド，水酸化物，フッ化物イオンやマグネシウム，ナトリウムイオンの各種伝導材料について最新の材料研究動向とその応用例について紹介する．　（特集担当委員：井手慎吾・幾原裕美・布谷直義・加賀洋史）

■ エネルギーデバイス用無機固体電解質

今西　誠之・森　大輔・田港　聡・武田　保雄

非リチウム系固体電解質材料の分類と応用展開に焦点を当て，代表的イオン導電体の歴史的背景を踏まえながら，酸化物・硫化物・ハロゲン化物といった具体的材料例を通じて，本分野における研究の進展と実用化への展開を概観する．

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■ 本質的酸素空孔を持つ新規超イオン伝導体の発見

八島　正知

本質的酸素空孔あるいは格子間酸素サイトを有する母物質を用いることで発見した，数多くの新規超イオン伝導体を紹介する．イオン伝導性は結晶構造と密接な関係があることもわかった．

■ 湿式法によるLaGaO₃系高酸素イオン伝導体の薄膜化と可逆動作型セルへの応用

石原　達己

再生可能エネルギー用いて電解して得たグリーン水素が，エネルギーキャリアーとして期待されている．本稿では再生可能エネルギーを水素で蓄積，平準化することを目的に，LaGaO₃の薄膜を用いる小型円筒型セルの作製とその作動特性を紹介した．

オープンアクセス

■ ランタンシリケートセラミックスとSOFC特性─Nd磁石によるc軸配向─

中山　享

ランタンシリケートセラミックスのランタンおよびケイ素のアルカリ土類元素置換によるイオン伝導の向上と大気中崩壊現象の改善，さらにc軸配向技術によるイオン伝導およびSOFC特性の向上などについて紹介する．

オープンアクセス

■ プロトン伝導性固体電解質における計算欠陥化学─材料探索と根源的理解─

藤井　進・笠松　秀輔・山崎　仁丈

計算欠陥化学を用いたプロトン伝導性酸化物の最近の成果を紹介する．ハイスループット第一原理欠陥計算による新規材料の発見や，レプリカ交換モンテカルロ法および分子動力学法による水和・プロトン拡散機構の解明に成功した．

■ 酸素解離吸着に着目したSOC空気極材料の開発

髙村　仁

固体酸化物セルの空気極材料に求められる酸素解離吸着能に着目し，パルス同位体交換法による簡便かつ迅速な評価手法や，スピネル型酸化物Co₃O₄，及び，Co₃O₄を分散したSc置換BaZrO₃プロトン伝導体の表面反応について紹介する．

■ 低温作動化を目指したジルコン酸バリウム系プロトン伝導性固体酸化物形燃料電池の開発

奥山　勇治

500℃-700℃作動を目指した固体酸化物形燃料電池の電解質として開発しているジルコン酸バリウム系プロトン伝導性電解質や電極材料の開発，更にはプロトン伝導性セラミック燃料電池の開発動向を紹介する．

■ 無機ポーラス材料をベースとした新規プロトン伝導体に関する研究

前川啓一郎・岡本　隼汰・松田　厚範

広い温湿度条件で作動する固体高分子形燃料電池への応用を見据え，リン酸を内包したZr核金属有機構造体UiO-66-Py，イミド結合を有する共有結合性有機構造体MTI-DAPy-COFおよびZSM-5型ゼオライトなどのプロトン伝導性多孔質材料を紹介する．

■ NMRと交流伝導度によるイオンダイナミクス解析─CeF₃ベースフッ化物イオン伝導体を例として─

村上　美和・嶺重　温

¹⁹F-NMRの測定と解析の工夫により，CeF₃ベースのフッ化物イオン伝導体中の3種類のFサイトを区別したダイナミクス評価を可能にした．この結果と交流伝導度測定から得られる伝導キャリアのジャンプ頻度を併せてイオン伝導性との関係を議論した．

オープンアクセス

■ 層状複水酸化物の水酸化物イオン伝導体および電気化学デバイス用材料への応用

忠永　清治

固体でありながら水酸化物イオンを伝導する層状複水酸化物は，次世代の燃料電池や水電解セルの固体電解質として期待されている．さらに，電極触媒材料など，他の電気化学デバイスへの応用研究も進んでいる．

■ ヒドリドイオン導電体の物質設計における電気的陽性金属の役割

小林　玄器

水素の電荷自由度により，ヒドリドイオン（H^-）導電体の物質設計は，他のイオン導電体と比較して電子伝導性の抑制，即ちH^-輸率を高めることに難しさがある．本稿では，蛍石型LaH₃に電気的陽性なSrを固溶させたときの物性の変化について紹介する．

■ Mg₃Bi₂ Zintl相の電気化学特性とMg²⁺イオン導電性

松井　雅樹

マグネシウムイオン電池の負極活物質として検討を行ってきたMg₃Bi₂ Zintl相は，室温作動で理論容量の90%程度の可逆容量を得ることができる特異的な活物質である．本稿では，このMg₃Bi₂の優れた電気化学特性を紹介するとともに，その特性を決定づける「表面の不動態化抑制効果」と「固相内でのイオン導電性」について議論を行う．

■ 多孔性配位高分子を用いた超マグネシウムイオン伝導体の創出

貞清　正彰

マグネシウムイオンをキャリアとして内包した多孔性配位高分子の合成と，ゲスト分子の蒸気存在下において発現するそれらの超イオン伝導性について紹介する．

■ ナトリウムイオン伝導性塩化物の開発

本橋　宏大・作田　敦・林　晃敏

全固体ナトリウム電池の実用化に向けたキーマテリアルとして高い導電率と酸化耐性，優れた成形性を有する塩化物固体電解質が注目されている．本稿ではNaTaCl₆について，アモルファスの観点からの材料開発と塩化物電解質を用いた全固体電池特性を中心に概説する．

■ ナシコン型Naイオン固体電解質の最前線─設計指針から全固体電池への展開─

林　克郎

ナシコン型Na₃Zr₂(SiO₄)₂(PO₄)系セラミックスのNa⁺イオン伝導度は近年も向上し続けていて，低温焼結や界面制御によりセラミック固体電池の有力電解質として研究が進展している．

この人にきく

谷口　功

セラミックスアーカイブズ　ガラス溶融炉向け電鋳耐火物

鈴木　宏和

新 研究室紹介　中部大学　生命健康科学部生命医科学科　医工学研究分野　山口研究室

山口　誠二

くろすろーど　日本での研究生活

CHUNG Ying（鐘　萾）

ほっとSpring　日本一のスズ鉱山の廃坑見学─明延鉱山の探検坑道─

布谷　直義