今月のオープンアクセス記事
金村 聖志
これまで幾度となく「環境」をテーマにした特集を取り上げてきましたが,ここにきて環境課題への取り組みはさらに加速されてきていることを強く感じています.特に持続的な社会課題解決のための枠組みとしてのSDGsの認知拡大やカーボン・ニュートラル,サーキュラー・エコノミーなどが大きく注目され,世界規模での環境貢献の必要性が取り上げられています.そのような背景がある中で,セラミックスが果たす役割は決して少なくありません.本特集では,環境貢献に寄与する環境調和型セラミックスをテーマに多方面から幅広い技術における最新の研究を取り上げます. (特集担当委員:新開誠司・濱崎喜仁・伊藤賢次)
蛯名 武雄
昨今環境課題への取り組みは更に加速されているが,セラミックスが果たす役割は決して小さくない.本特集では,環境貢献に寄与する環境調和型セラミックスをテーマに多方面から幅広い技術に渡る最新の研究を取り上げる.
宮内 雅浩・庄司 州作・張 葉平・櫛田 優・山口 晃・藤田 武志・阿部 英樹
光照射のみでメタンの二酸化炭素改質反応(ドライリフォーミング,DRM)を起こすことができる光触媒材料を開発した.金属ナノ粒子助触媒を担持した半導体光触媒において,半導体の格子酸素イオンをメディエーターとする機構により,低温,かつ,コーキングフリーで長期間安定にDRM反応が進行する.
立川 貴士
安全・安価・安定な光触媒材料であり,太陽光を利用した水素製造への応用が期待されるヘマタイト(赤錆)を利用したヘマタイトメソ結晶光電極に関する研究成果を紹介する.
田村紗也佳・アリシア クリコウィッツ・齋藤 美和・本橋 輝樹
酸素貯蔵材料とは多量の酸素を高速可逆に吸収放出する金属酸化物であり,この特性を利用した大気中からの酸素ガス濃縮分離(酸素ガス製造)への応用が期待されている.本稿では,2種類の酸素貯蔵材料について,酸素ガス製造応用に向けた機能設計の取り組みを紹介する.
藤 正督
カーボンニュートラル社会にむけてセラミックスも変革の時をむかえている.その一つの策として我々は「無焼成セラミックス」の研究を行っている.本稿では,セラミックス原料の表面活性化のメカニズムや応用研究の成果の一部について説明する.
島内 理恵
地球環境を守るためエネルギー問題は緊急の課題である.本稿ではエネルギー問題を解決するためセラミックスが貢献できる電力分野のキーワード「電力貯蔵」と電力用電池であるNAS電池を中心に各種の電池について解説する.
綾野 克紀
インフラを支えるコンクリート構造物が,硫酸,塩,凍結融解,繰返し荷重などの作用によって劣化してる.鉄の製錬時に発生する高炉スラグを用いることで,これまでにない耐久性を実現し,社会実装を果たしているコンクリートを紹介する.
半澤 茂・松島 孝幸・瀧本 智明
セラミックス焼成用の連続炉の低温排熱を,ビル空調や厨房温水に活用する最新のZEB-Ready指向ビル(基準ビル比で50%以上の省エネ)の解析を事例に,全体最適な低環境負荷型製造プロセスによる省エネ推進を考察する.
小塚 久司
酸素センサの電極に用いられる白金を,安価な酸化物材料で代替することを可能にした.LaCo0.5Ni0.5O3は室温導電率が1900 S/cmと高く,その温度係数(RT~900℃)が金属並みに小さな材料である.
木之下広幸・安井賢太郎
粉砕したガラス繊維強化プラスチックと粘土を混合して焼成することで作製した多孔質セラミックスの主な特性について概説する.
村山 憲弘・松岡 光昭・平木 岳人
大量に発生する副産物として,鉄鋼スラグや石炭フライアッシュ,アルミニウムドロスなどがあげられる.これらを出発原料に用いて,有害イオンを除去する環境浄化材やジオポリマーなどの硬化体を創製する研究例を紹介する.
藤村 卓也・笹井 亮
層状複水酸化物は高い陰イオン交換能・陰イオン選択性を示すことから,水中の有害陰イオン除去への利用が期待される物質である.本稿では環境浄化を目的に,筆者らが研究開発を行なってきた層状複水酸化物の海水中での陰イオン選択性や,カラムを用いた通水処理などについて紹介する.
清原 正勝・北岡 諭・吉田 克己・飯田 正和・多々見純一
髙島 賢二
難波 徳郎・紅野 安彦