村山 宣光
層状化合物としては,古くから「千の用途を有する素材」として知られている粘土鉱物が代表的であり,現在では合成によりさまざまな組成・構造,ナノシート化やボトムアッププロセスが見出されており,それらは階層分けが難しい程に多彩な機能・多用な応用展開を見せている.本誌では2018年5月に「層状物質」を特集しており,それ以降のCOVID-19の深刻な状況下でも層状化合物の研究は着実な進展を遂げている.そこで,本特集では層状化合物およびナノシート研究の最新の研究動向について,6月号・7月号の2号連載で紹介する. (特集担当委員:町田慎悟,編集協力:後藤知代(大阪大学)・嶋村彰紘(産総研))
長田 実
層状化合物が織りなすユニークな構造や機能は我々を魅了し,セラミックス科学,技術の発展に貢献している.本稿では,層状化合物とその剥離ナノシートの歴史を振り返るとともに,最近の研究動向について紹介する.
岡田 友彦
層状の粘土鉱物(スメクタイト)が水に溶解する有機物(カフェインをモデル物質)を効率良く吸着する現象について、SPring-8の放射光粉末X線回折によって、水中でのカフェインの吸着過程を追跡した例を紹介する.
井出 裕介
層状ケイ酸塩を剥離したナノシート上での金属粒子の原子層厚制御,層状ケイ酸塩の層内細孔への不安定分子の埋め込み,層状チタン酸塩の分解・再結晶化による新規ナノ構造体への転換による触媒や光触媒,UV遮蔽材の設計法を概説する.
宮川 雅矢・濤崎 啓吾・廣澤 史也・高羽 洋充
代表的な無機有機ハイブリッド材料である有機粘土について,その構造・物性の探究に関する最新展開を紹介する.また,筆者らが最近注目している液相吸着系について,最近確立したその含水率および吸着特性の推定方法も紹介する.
町田 慎悟
層状粘土鉱物カオリナイトの端面は層表面とは異なる表面である.そのため,この端面に焦点を絞った反応等について著者の研究を紹介する.
森田 将司・前田 和之
無機-有機ハイブリッド材料は,無機物と有機物の特徴を兼ね備えた機能発現が期待され,その応用は多岐にわたる.そのような材料の中で,本稿では4‑Phosphonophenylsilaneを用いたi)Zr系層状無機-有機ナノ構造体,ii)層状シリケート層表面への固定化を紹介する.
藤井 和子・樋口 昌芳
層間に存在する有機基と無機層が共有結合で一体化した層状化合物(層状無機-有機共有結合体)とエレクトロクロミック(EC)特性を示すメタロ超分子ポリマーの複合化,及び複合化によるEC特性の向上を紹介する.
徳留 靖明・樽谷 直紀
本稿では,層状水酸化物材料のナノ微細化と溶媒への高濃度分散を紹介する.さらに,この分散系と有機低分子・ポリマーおよび無機ポリマーとのハイブリッド化がもたらす機能について,筆者らの近年の研究を中心に紹介する.
嶋村 彰紘
本研究ではXANES測定を用いたZn/Al-層状複水酸化物の熱処理による変化について評価を行った.XANES測定を用いることで直接的に層状複水酸化物が金属複酸化物に変化していることを観測することができたので,その詳細について報告する.
山口 哲生・Jae-Min OH
サイズと表面電荷の異なる複数の層状複水酸化物(LDH)を合成し,血液適合性を赤血球と血漿タンパク質の両側面から検討した.本稿では赤血球の溶血反応と血漿タンパク質の吸着等温線と蛍光消光により血液適合性検討した結果を紹介する.
石原 伸輔・井伊 伸夫
層状複水酸化物にガス源となるアニオンを導入し,二酸化炭素や水蒸気を刺激としたアニオン交換反応を誘起することで,生理活性ガス(H2SやNO)を徐放できることを見出した.徐放機序や医療応用について紹介する.
柳瀬 郁夫
本稿では,水中及び水蒸気存在下における,合成した層状複水酸化物のCO2吸収および発光特性について報告する.
横井 太史・島袋 将弥・川下 将一
リン酸八カルシウムは層状構造を持ち,その層間にカルボン酸を導入することができる.本稿ではこの特異な性質を概説するとともに,機能性カルボン酸で層間を修飾したリン酸八カルシウムのバイオメディカル応用の試みについて紹介する.
武井 貴弘・齋藤 典生・熊田 伸弘
層状ペロブスカイトは,ペロブスカイトの化学組成自由度を持ちつつ,ソフト化学的に活性度を持つ,興味深い材料である.本稿では,無機質の層状ペロブスカイトに焦点を当て,ソフト化学処理による機能性材料の合成を行った研究例を紹介する.
勝 祐介・茂木 淳・光岡 健
川嶋 託司・元滿 弘法・佐々木 陽
山下 誠司
渡邉 友亮・村串まどか
水町 幹人
洪 炳哲
小田喜 勉・橋本 篤典