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中平 敦
セラミックスを始めとする脆性材料の変形・破壊現象は,しばしば材料応用における大きな障害となっている.これを克服するには微視的なスケールでの変形・破壊のメカニズムを解明・理解することが必須である.最近,ナノインデンテーション法やマイクロピラーを用いた微小機械試験,その場TEM 観察法など,ナノスケールでの力学評価法に大きな技術的な進歩があり,新しい知見が得られつつある.本特集は,この分野における最近の研究の進展を紹介したい. (特集担当委員:松永克志・古嶋亮一・町田慎悟・和田琢真)
東田 賢二・田中 將己
き裂先端から生成された転位は,その内部応力により外部応力集中を遮蔽し破壊靭性を向上させる.これを転位遮蔽効果と呼ぶ.本稿ではMgO,Si結晶など脆性材料におけるその効果と破壊靭性への寄与について解説する.
中村 篤智・大栗 洋人・李 燕
近年,各種半導体材料のナノスケール力学特性について光環境効果の評価が可能となっている.本稿では,酸化亜鉛の単結晶の力学特性に及ぼす光環境効果の表面方位依存性について,最新の論文内容を概説し,最近の研究進展状況を報告する.
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赤津 隆
有限要素法でシミュレートしたナノインデンテーション挙動を数値解析して開発した局所的な弾性率や降伏応力を導出する方法を紹介する.さらに,それに付随する諸問題(圧子の弾性変形や圧子/試料表面の摩擦)にも言及する.
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増田 紘士
巨視的スケールでは脆性的なセラミックスも,微視的スケールでは室温においても可塑性を示す.本稿は,酸化物セラミックス(YSZ,Al2O3など)の室温塑性変形について,筆者らの最近の研究成果をまとめた.
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岸田 恭輔
新しい力学特性評価法である単結晶マイクロピラー圧縮試験法と,精密な転位構造解析により調査した各種硬質脆性材料の室温塑性変形に関する最新の研究成果について紹介する.
多々見純一
本稿では,近年明らかとなってきたメソスケール力学特性に関する事象 について,概説する.
嶋田 隆広・平方 寛之
ナノスケールの脆性破壊現象では,従来の破壊力学基準が破綻する.本稿ではナノ破壊現象を根源となる原子・電子論的観点から力学的に捉え,新たなナノ破壊力学基準とこれに基づく量子的な強靭化方針について解説する.
平方 寛之・嶋田 隆広
余剰電子やホールの強制的な注入・除去により,材料の機械的特性や強度が変化することが示されている.本報では,その効果に関する実験および理論研究の成果を紹介し,機構の解明と制御の可能性について議論する.
近藤 隼・厳 靖園・柴田 直哉・幾原 雄一
TEMナノインデンテーション法を応用したセラミックス粒界における原子スケールでの破壊過程の研究について紹介する.
篠崎 健二
ガラスの脆性を克服するため,力学的に異なるナノ構造を導入して破壊靭性を向上させるアプローチを提案した.微量の金属ナノ粒子を分散させることでき裂先端での応力集中を緩和し,破壊靭性が顕著に向上することを実証した.既製ガラス表面へのナノ粒子析出やゾルゲル膜への応用も展開しており,ガラス材料の新たな設計指針として期待される.
譯田 真人
金属ガラスの常温での塑性変形能向上に向けた熱的構造若返りなどの構造制御手法と,原子スケール構造が変形挙動や力学特性に及ぼす影響について,主に原子モデリングによる研究成果を紹介する.
梅津 信幸・渡邊 祐二・杉浦 究・大橋 謙一
永田 憲一・濵村 健一・姫野 栄仁・向井 伸二
吉川 裕亮・岸 美保・小浜 祐貴・小澤 晃代
上田 純平
相見 晃久
樽谷 直紀